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みみ ear

耳の病気

耳の構造

耳の構造

耳は外耳、中耳、内耳から構成されます。

外耳

耳介と外耳道(耳の穴から鼓膜までの道のこと)から成る部分で外耳道の奥に鼓膜が張っています。

中耳

鼓膜から奥が中耳で骨に囲まれた鼓室と呼ばれる空間(中耳腔とも言う)から成っています。ここには鼓膜の内耳の間にかかる橋のような耳小骨(3つの小さな骨)が存在しており、鼻やのど(特に鼻の奥の突き当たりにある上咽頭)とつながっている耳管も存在しています。

内耳

中耳のさらに奥で骨の中に埋もれている部分で、聴覚〔音の情報を感知〕に関わる蝸牛と平衡感覚〔体のバランス〕を司る前庭や三半規管から成ります。

蝸牛/前庭/三半規管の中はリンパ液という液体が入っています。蝸牛には聞こえの感覚細胞である多数の有毛細胞があり、一つ一つの細胞に蝸牛神経の終末部分が付着しています。

耳の役割

1.聴覚

外耳で音を集めて、中耳で外耳から伝わってきた音情報の振動を鼓膜/耳小骨などで増幅させて内耳へ伝え、内耳で伝わってきた振動を電気信号に変換して脳の聴覚中枢に伝え、脳の聴覚中枢で信号を処理することで「意味のある音」として認識することができます。

2.平衡感覚

内耳の三半規管と前庭(特に前庭内にある耳石器)という平衡器官が体の平衡を保つ働きをしています。三半規管と耳石器が体がどれくらいの速さで、どの方向に、どのくらい傾いているかなどの情報を感知し、その情報は脳の一部の小脳(平衡感覚と筋肉運動の中枢であり、力や距離などの誤りを修正し、スムーズな運動を行うために必要不可欠な部分)に送られて、 体のバランスを保つ命令を各部分(筋肉や腱など)に出します。

こんな症状があったらご相談ください

  • 耳が痛い
  • 耳がかゆい
  • 耳だれがでてくる
  • 耳のつまり感を感じる
  • 音が響く 
  • 耳が聞こえにくい
  • 耳鳴りがする
  • めまいがする
  • 耳の中でザーやキーンとした音が聞こえる
  • 耳たぶが腫れている 
  • 耳掃除をしてもらいたい 
  • 補聴器の相談をしたい など

耳の代表的な病気

中耳炎

中耳腔(鼓膜の奥にある空間)に炎症がおきている状態が中耳炎です。中耳炎の原因・病態は様々であり、主に急性中耳炎・滲出性中耳炎・慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎の4つ分類されます。

急性中耳炎

風邪(特に鼻風邪)を引いた時に発症しやすい中耳炎で、特に乳幼児に多くみられます。

急性中耳炎の原因

細菌やウイルスなどの病原体が鼻/のど(特に鼻の奥の突き当たりにある上咽頭)から中耳へと耳・鼻・のどをつなぐ「耳管」という部分を通って侵入し、そこで感染することで炎症が起きる病気です。時に中耳に膿が溜まることもあります。

急性中耳炎の症状

ズキズキする激しい耳の痛み、発熱、聞こえづらさ、耳だれ(耳から膿が出る)などがあります。

急性中耳炎の検査・診断
●耳の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、鼓膜が赤くなっているかや腫れがないか(膿が溜まっていないか)、耳だれがないかを確認します。

●培養検査

耳だれや膿(鼓膜を切開して排出された時)があれば行います。

急性中耳炎の治療
◎保存的療法

消炎剤や抗生物質(細菌性の場合)の内服、場合により抗生物質の点耳液で治療を行います。 多くは急性鼻炎や急性咽頭炎・急性扁桃炎が原因になっていることが多いので、原因になっている病気の治療も行います。

◎手術的療法

また膿が溜まって鼓膜の腫れがひどくて痛みが強い時や発熱を伴っている場合は、特殊な機器で局所麻酔を行った後に鼓膜切開術(鼓膜を切開して溜まっている膿を排出する手術)を行います。

滲出性中耳炎

鼓膜の奥の中耳に滲出液という液体が溜まる中耳炎です。

滲出性中耳炎の原因

急性中耳炎が長引く・急性中耳炎を繰り返し発症するなどが原因となって生じる場合と副鼻腔炎に伴って生じる場合が多いです。浸出液はサラサラしたものから粘り気のあるものまで様々です

滲出性中耳炎の症状

耳の痛み、発熱、耳だれ症状はなく、耳の聞こえづらさや耳のつまり感などが主症状となります。そのため病気に気づくのが遅くなってしまうこともしばしばあります。

診断・検査
●耳の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、鼓膜から透見される滲出液の確認を行います。

●聴力検査

滲出性中耳炎の状態の程度や治療方針を決めるために行います。7歳以上であれば検査可能です。

●ティンパノメトリー

鼓膜の動きやすさを調べる検査で、滲出性中耳炎の状態の程度や治療方針を決めるために行います。聴力検査と違って、乳幼児でも可能な検査です。

●画像検査(X線撮影/CT検査)

滲出性中耳炎の状態の程度や治療方針を決めるために行うことがあります。

治療
◎保存的療法

粘膜改善薬/去痰薬や鼻炎症状(鼻汁・鼻づまり)があれば抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン受容体拮抗薬・咽頭炎症状があれば抗炎症薬などの内服薬の処方と来院時には耳管通気(鼻と耳をつなぐ耳管に空気を通すことで、中耳に溜まった滲出液の排出を促したり、閉じていた耳管を開放する治療)という処置を行います。

内服治療などで改善が認められない場合や滲出性中耳炎を繰り返しやすい場合は、ご自宅でも《自己通気療法》を行うことをお勧め致します。

自己通気療法について

自己通気療法について

【オトヴェント】という器具を用います。【オトヴェント】は鼻で膨らませるいわゆる鼻風船であり、それを使用することで耳管を経由して中耳腔に空気を入れることができ、中耳内の換気を促して滲出性中耳炎を治療に導くといったものです。必要以上に圧がかからないため安全で、自宅で何回も繰り返して行うことが出来ます。

飛行機に乗ると耳がつまって中耳炎になりやすい方、ダイビングをしたいけど耳抜きがうまくできない方にも有効です。

さらに詳しく知りたい方へ

詳しくは株式会社 名優のサイトをご覧ください。

株式会社 名優

◎手術的療法

保存療法を行っても改善がない場合は特殊な機器で局所麻酔を行った後に鼓膜切開術(鼓膜を切開して溜まっている滲出液を排出させる手術)を行ったり、滲出性中耳炎を繰り返す場合は鼓膜チューブ挿入術(鼓膜にチューブを留置する手術)を行うこともあります。

慢性中耳炎

急性中耳炎が再発を繰り返すなどして中耳内の炎症が慢性化し、しばしば細菌感染を起こして持続性・反復性の耳漏を生じるようになる病気です。それに伴って鼓膜や耳小骨にも何らかの障害が起きるために聞こえが悪くなります。

慢性中耳炎は

の2つに分類されます。

慢性単純性中耳炎

鼓膜に穴が開いて自然に塞がらなくなった状態にある慢性中耳炎です。鼓膜に穴が開いた状態が続くために音の振動が十分に伝わらなくなるために難聴を来します。また穿孔を通して細菌が入ることにより耳だれを繰り返します。

癒着性中耳炎

中耳腔内の空間を換気している耳管が機能しなくなり、中耳腔内に空気が入らないことで鼓膜が中耳腔の内壁の粘膜と癒着してしまう慢性中耳炎です。癒着のせいで鼓膜が振動できなくなるため難聴を生じたり、換気が悪くなることで炎症が起こり耳だれを生じます。

慢性中耳炎の原因

乳幼児期に急性中耳炎を反復して起こしたり、しっかりと完治させなかった急性中耳炎が長期にわたって持続して炎症が長引いたことが原因と言われています。そこに加えて、副鼻腔炎や鼻炎など鼻/のど(特に鼻の奥の突き当たりにある上咽頭)と中耳をつなぐ耳管の機能を低下させる何らかの病気の存在も慢性化の一因になると言われています。

●慢性単純性中耳炎

急性中耳炎で耳だれが発生した際に開いた鼓膜の穴は、ほとんどの場合、鼓膜の本来持つ高い再生力によって自然に塞がるのですが、塞がる前に感染によって耳だれが繰り返されると、やがて穴の開いた状態が常態化して発症します。

●癒着性中耳炎

中耳腔側にへこんだ鼓膜と炎症で傷ついた中耳腔の内壁の粘膜がくっついてしまうことで発症します。

慢性中耳炎の症状

鼓膜の穿孔や耳管の機能障害によって中耳腔内で細菌感染を繰り返し、中耳腔からの分泌物が増えて耳だれが現れるようになります。抗生物質が効きにくい耐性菌が感染すると持続的になります。

また、鼓膜の穿孔や癒着の影響で鼓膜が十分な音振動を伝えることができなくなる伝音難聴を生じます。さらに、長期にわたる慢性炎症の影響で、粘膜の肥厚や耳小骨(鼓膜から内耳の蝸牛に音を大きく増幅させて伝える役割)が石のように硬化することによって耳小骨連鎖(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)の可動域が低下することにより、伝音性難聴が進行します。

中耳の炎症が内耳にまで及ぶと蝸牛(鼓膜の振動を電気信号に変換する器官)の機能が低下し、治療が難しい感音性難聴を併発するとともに耳鳴りを引き起こすようになります。しばしば、伝音性難聴と感音性難聴が合併した混合性難聴に至ることもあります。

慢性中耳炎の検査・診断
●耳の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、鼓膜の穿孔や癒着の有無や程度を評価します。

●聴力検査

難聴の有無や程度を評価します。

●パッチテスト

鼓膜穿孔がある場合、人工の膜で鼓膜穿孔を閉鎖する前後で聴力検査を行い、聴力の改善が得られるかどうかを確認します。

聴力改善あり➡耳小骨連鎖の可動域は正常なので、鼓膜穿孔閉鎖術(近年保険適応となった、リティンパという人口材料を使用した鼓膜再生術)や鼓膜形成術(耳の後ろを小さく切開し、周囲の筋膜を使用して鼓膜穿孔の修正を行う手術)を行えば聴力改善を期待できることが予測されます。

聴力改善なし➡耳小骨連鎖の可動域に問題があることが考えられ、鼓室形成術(穿孔している鼓膜を再建する手術+耳小骨連鎖の再建を行う手術)を検討する必要があるということが考えられます。

●培養検査

耳だれに対して培養検査を行います。

●画像検査(X線撮影/CT検査)

中耳腔における炎症の広がりや、中耳腔に存在する耳小骨連鎖の形態評価などのために行うことがあります。

慢性中耳炎の治療
◎保存的療法

細菌感染にて炎症が起こっている場合は感染のコントロールが必要です。局所処置(来院時に生理食塩水で洗浄など)や抗生物質の内服や抗生物質の点耳液で治療を行います。

◎手術的療法

慢性的な炎症があるため、風邪などをきっかけに再び耳だれが出てきてしまうので、保存的療法では繰り返す耳だれを止めることはできません。

耳だれに対する根本的な治療は、局所麻酔下の鼓膜穿孔閉鎖術・全身麻酔下の鼓膜形成術・全身麻酔下の鼓室形成術といった手術になります(慢性中耳炎の病態や程度によって手術の方法が変わります)。手術を行うことで耳だれも止まりますし、聴力を改善できる場合もあります。

※鼓膜穿孔閉鎖術・鼓膜形成術・鼓室形成術が必要と診断した場合には、手術可能な医療施設にご案内致します。

真珠腫性中耳炎

鼓膜の一部が中耳腔側に凹み、そこに堆積した耳垢(耳あか)が大きくなりながら塊となり、徐々に大きくなっていき、それが周囲の骨など様々な組織を破壊しながら進行していく病気です。 耳垢が堆積した塊が一見すると真珠のように見えることから真珠腫塊と呼ばれています。

慢性中耳炎の一種ですが、慢性単純性中耳炎は鼓膜の中央部の鼓膜緊張部に穿孔を認め、中耳腔の粘膜の炎症であるのに対して、真珠腫性中耳炎は鼓膜の上方(鼓膜弛緩部)や辺縁(鼓膜緊張部辺縁)に穿孔を認め、中耳腔の周りの骨の病変を伴うために大きな合併症を引き起こす可能性があります。

真珠腫性中耳炎の原因

鼓膜の凹みは、中耳腔内の空間を換気している耳管が機能しなくなり、中耳腔内に陰圧が生じて、鼓膜の一部が中耳腔側に引き寄せられることで発生するものといわれています。そのため、耳管の機能障害が発症に関与している滲出性中耳炎や癒着性中耳炎などから真珠腫性中耳炎に進展することもあります。

また、先天的(生まれつき)に中耳腔内に真珠腫が存在していることもあります。

真珠腫性中耳炎の症状

真珠腫が小さい段階では自覚症状はほとんどありませんが、真珠腫に感染が起こると耳の痛みや耳だれが生じます。 また真珠腫が大きくなってくると、耳小骨(鼓膜から内耳の蝸牛に音を大きく増幅させて伝 える役割)が破壊されて伝音性難聴を生じます。さらに内耳にまで真珠腫が進行すると、 蝸牛(鼓膜の振動を電気信号に変換する器官)や三半規管(体の平衡感覚を司る器官)が破壊されて治療が難しい感音性難聴や耳鳴り、めまいなどを生じるようになります。

しばしば、伝音性難聴と感音性難聴が合併した混合性難聴に至ることもあります。 その他に、中耳や中耳周囲の側頭骨に存在する顔面神経管(顔面神経が走行している骨性の神経管)を破壊して顔面神経が圧迫されたり、中耳腔に存在する鼓索神経(顔面神経の枝で舌前方2/3の味覚を支配する神経)が圧迫されると顔面神経麻痺や味覚障害を起こします。

また上方の骨である頭蓋骨を破壊すると頭蓋骨内に炎症を波及させ、それによって髄膜炎や脳炎などの重大な合併症を引き起こすこともあります。

真珠腫性中耳炎の検査・診断
●耳の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、真珠腫性中耳炎をうたがうような鼓膜の凹みや白色の塊がないかを確認します。

●聴力検査

難聴の程度や難聴の性質を確認することで病変の程度を確認します。

●画像検査(CT検査/MRI検査)

CT検査で、真珠腫の進展範囲の確認・耳小骨など骨破壊の有無や程度の評価・周りの器官への侵害の有無や程度の評価などを行います。またある程度の大きさの真珠腫が存在する場合、MRIの特殊な抽出方法(拡散強調画像)によってより詳しく真珠腫の存在の確認を行うことが出来ます。

※MRI検査が必要と診断した場合は、検査可能な施設にご案内致します。

●培養検査

耳だれがあれば培養検査を行います。

真珠腫性中耳炎の治療
◎手術的療法

真珠腫性中耳炎の治療は原則、手術になります。

手術は全身麻酔下の鼓室形成術(真珠腫の除去ならびに破壊された鼓膜や耳小骨連鎖の再建を目的に行う手術)が主に行われます。真珠腫が乳突蜂巣(中耳の周囲に存在するスポンジ様に発達した骨)にまで進展している場合は乳突削開術(鼓室と連絡している乳突蜂巣を切り開く手術)が追加されることもあります。

真珠腫は小さなものでも取り残しがあると、そこから大きさを増して再発する可能性があるので、手術では全ての真珠腫を余すことなく取り除く必要があります。こうした必要性から手術を2回に分けて行う段階的鼓室形成術(1回目で真珠腫の摘出を行い、約1年後に行う2回目の手術で再発の確認と鼓膜や耳小骨連鎖の再建を行う手術)を行うこともあります。

※手術が必要と診断した場合は、手術可能な医療施設にご案内致します。

外耳炎

外耳道(耳の穴から鼓膜までの道)に何かしらの物理的な刺激が加わり、炎症が生じた病気です。

外耳炎の原因

耳掃除のやり過ぎ(綿棒も含む)・指の爪でひっかく・耳栓やイヤホンなどの外的な要因がもとで炎症を起こし、細菌・真菌などが侵入して感染を起こします。

昨今テレワークの増加によりイヤホンによる外耳炎の方が多く、イヤホン装用による小さな傷から感染したり、長時間イヤホンをつけたりすることで外耳道が高温多湿になり菌が繁殖することが原因と言われています。

外耳炎の症状

耳のかゆみ、痛み、耳だれ(透明な液・臭いを伴う黄色や黒色など様々)などを生じます。 耳内におできができる「限局性外耳炎」はおできが破れると膿と血液がでることもあります。

広範囲の外耳道が炎症により腫れてしまう「びまん性外耳炎」になると聞こえづらさを感じたり、外耳炎が遷延したり進展したりすると中耳や内耳にまで炎症が波及し聴力の低下につながることもあります。

外耳炎の検査・診断

●耳の観察

外耳を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、外耳道が赤く腫れていたり、膿や分泌物のカスが付いている状態があるかを確認します。

●培養検査

耳だれがある場合は感染性が疑われますので、培養検査で細菌や真菌を調べて菌種を同定します。(菌種により治療が変わります。)

外耳炎の治療

◎保存的治療

細菌性でも真菌性でも外耳道が耳だれで汚れている場合は生理食塩水で洗浄し汚れを吸引する耳処置を行います(限局性外耳炎の場合はおできを切開して膿を排出することもあります)。その後、抗生物質や抗真菌薬の内服薬、点耳液、軟膏塗布を状態によって使い分けて治療を行います。また真菌や抗生物質が効きにくい耐性菌による外耳炎の場合は頻回の通院で耳処置を行う必要もあります。

耳垢(耳あか)

耳垢とは、空気中のほこりや皮膚の残骸がたまったものと外耳道の耳垢腺という人体から出る分泌物が混ざったものです。 耳垢は、分泌物によって湿性と乾性に分類されます。耳垢には殺菌作用があると言われており、外部刺激から外耳道や鼓膜を保護する働きがあります。

外耳道には自浄作用があるため耳垢は自然に排出されるのですが、耳掃除をして耳垢を奥まで押し込んでしまったり、耳垢が大量に蓄積したりすると、外耳道の狭窄・閉鎖をきたし、耳垢塞栓(耳垢が詰まった状態)となります。

耳垢の症状

耳の閉塞感、難聴、耳鳴り、耳の痛み(耳垢が鼓膜に触れると)などを自覚します。また、入浴や水泳で耳垢が水分を含んで膨張すると、急激な耳の痛み・難聴をきたすこともあります。

耳垢の診断・検査

●耳の観察

耳の中を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、耳垢の場所や程度を評価します。

●画像検査(CT検査/MRI検査)

外耳道の真珠腫(外耳道の下壁を中心に限局的に耳垢の塊が堆積し、そこに炎症が生じて骨膜炎を引き起こし、骨が壊死して破壊される病気)が隠れていることがあるので外耳道真珠腫を疑った場合はCT検査やMRI検査を行うことがあります。

※MRI検査が必要と診断した場合は、検査可能な施設にご案内致します。

耳垢の治療

◎保存的治療

耳の中を顕微鏡で見ながら、耳垢鉗子(耳垢を掴んで摘出する器具)や吸引管などを使用して耳垢を取り除きます。耳垢が固くて容易に取れない場合は、耳垢水といった耳垢を柔らかくするお薬を自宅で数日点耳してもらってから来院していただき耳垢を取り除くことがあります。また耳垢の量が多かったり、除去に際して痛みを伴う場合は数回に分けて取り除く必要があります。

外傷性鼓膜穿孔

鼓膜が物理的な衝撃(耳かきや綿棒で鼓膜を突く)や急激な気圧変化(平手打ちされた場合や飛行機の離着陸やダイビングなど)によって穿けることを言います。

外傷性鼓膜穿孔の症状

鼓膜に穴があくと聴力の低下、耳のつまり、耳の痛み、出血などが起こり、内耳障害を合併すると耳鳴、めまい症状引き起こすことがあります。

外傷性鼓膜穿孔の検査・診断

●耳の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、穿孔の場所や程度を評価します。

●聴力検査

障害の程度や障害が中耳や内耳に及んでいないかどうかなどを評価します。

●画像検査(CT検査)

聴力検査にて中耳や内耳の障害が疑われる場合は、CT検査を行うことがあります。

外傷性鼓膜穿孔の治療

◎保存的治療

9割方は保存的な治療(感染予防で抗生物質の点耳液などを使用)で1か月以内に穿孔が閉鎖しますが、穴が大きいもの・もともと鼓膜が薄いもの・感染を起こして中耳炎を起こしたものでは穴が自然に閉じません。

◎手術的療法

保存的に鼓膜穿孔が閉じない場合は、全身麻酔下の鼓膜形成術(耳の後ろを小さく切開し、周囲の筋膜を使用して鼓膜穿孔の修正を行う手術)を行う必要があります。また近年では外来局所麻酔で手術可能なリティンパという人口材料を使用した鼓膜穿孔閉鎖術が可能になりました。

※鼓膜形成術や鼓膜穿孔閉鎖術が必要と診断した場合は手術可能な医療施設にご案内致します。

耳管機能障害(耳管狭窄症・耳管開放症)

耳と鼻・のどをつなぐ細い管状の通路を耳管と呼びます。耳管は平常時は閉じた状態を保持していますが、嚥下(唾液や食事を飲み込むこと)やあくびをした際に一時的に開くことで中耳内の気圧を調整するなどの役割を担っています。また、分泌物の排泄機能もあります。

高層ビルのエレベーターに乗った際に急に気圧が変化して耳がこもった感じになりますが、唾を飲み込むと正常に戻るのは、圧の調整機能が正常に働いているためです。耳管機能障害はこうした耳管の機能が正常に働かなくなる病気のことを言います。

耳管狭窄症

耳管が塞がれたり狭くなったりする病気です。

耳管狭窄症の原因

風邪の急性鼻炎やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、上咽頭炎(鼻の奥の突き当たりにある上咽頭という場所の炎症)などの鼻やのどの炎症がほとんどであり、炎症により鼻側の耳管開口部がふさがってしまうと耳管狭窄症になってしまいます。大人の耳管狭窄症の場合、まれに上咽頭がん(鼻の奥にできた腫瘍)が原因になることもあるので注意が必要です。

耳管狭窄症の症状

耳のつまり感や音のこもり感、耳鳴り、自声強調(自分の声が響いて聞こえる)、自己呼吸音聴取(自分の呼吸音が聞こえる)などの症状が現れます。耳管狭窄症は耳抜きをすることで症状が軽くなることがあります。

耳管狭窄症の検査・診断
●耳・鼻の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、鼓膜の凹みの有無確認を行います。また大人の耳管狭窄症においては、上咽頭(鼻の奥の突き当たりの場所)に腫瘍ができている可能性もあるのでのど内視鏡検査(電子ファイバースコープ)を行うことがあります。

●聴力検査

難聴の状態から耳管狭窄症の傾向があるかがわかります。

●ティンパノグラム

耳の外側から鼓膜に圧力をかけることで鼓膜の動きやすさを調べる検査で診断可能です。

●耳管機能検査

耳管の圧の調整機能を調べる検査で診断が可能です。

※当クリニックでは現在行うことが出来ないため、検査が必要と診断した場合には、検査可能な施設にご案内致します。

●耳管通気

鼻から耳管カテーテルという細い管を片方の鼻から挿入し、鼻の奥にある耳管開口部に当て直接耳管に空気を送り込む処置のことです。耳管狭窄を確認かつ症状を軽減させることができます。

耳管狭窄症の治療
◎保存的療法

原因である鼻やのどの病気に対する治療が中心になります。また耳管通気を行うこともあります。

耳管開放症

耳管が開いたままになる病気で鼓膜が過振動の状態になります。

耳管開放症の原因

特に大人の女性に多く、ダイエットや大きな病気により体重が減ったことで耳管周囲の組織がやせてしまうことや顎関節症、妊娠、ストレス、循環障害などが原因と考えられています。

耳管開放症の症状

耳のつまり感や音のこもり感、耳鳴り、自声強調(自分の声が響いて聞こえる)、自己呼吸音聴取(自分の呼吸音が聞こえる)などの症状が現れます。臥位や前屈位(下頭位)することで耳管周囲の組織が充血して耳管が狭まり症状が軽減します(重症例だと改善がない場合もあります)。逆に立ち仕事や運動、脱水で症状が悪化します。

耳管開放症の検査・診断
●前屈位(下頭位)での症状変化

診察時に、椅子に座りながら頭を下にむけてもらうもらうことで症状が軽減するかどうかを確認します。

●耳の観察

通常の耳管開放症では鼓膜所見は正常なことが多いのですが、開放した耳管を通じて鼻・のどの圧変化が中耳腔に伝達されるため、鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察ながら呼吸をしてもらう(患者さん自身の指で片方の鼻の孔を塞いでもらい、塞いでいない鼻腔で大きく深呼吸してもらう)と、呼吸性動揺(鼓膜が呼吸に合わせて動くという所見)がみられることがあります。

●耳管機能検査

耳管の圧の調整機能を調べる検査で診断が可能です。

※当クリニックでは現在行うことが出来ないため、検査が必要と診断した場合には、検査可能な施設にご案内致します。

耳管開放症の治療
◎保存的療法

体重減少が原因の場合、栄養をしっかり取って体重を増やしたり、水分摂取をきちんと行うことで改善される可能性があります。鼻すすりを行うと症状が改善することがありますが、後に癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの中耳炎に移行することがあるので鼻すすりはやめましょう。

また頸部圧迫(男性ならネクタイ・女性ならスカーフやハイネックのセーターなど)により耳管周囲にむくみを生じさせる)も有効です。(強い締めすぎには注意してください)。

内服薬治療として漢方薬(加味帰脾湯や補中益気湯など)や耳管周囲組織を充血させる目的で血流や代謝を改善させる薬などを処方します。また一時的に耳管開口部を塞ぐ目的で生理食塩水を点鼻してもらったり、鼓膜の過振動を抑えるために鼓膜表面に小さなテープを貼ったりする治療もあります。

◎手術的療法

滲出性中耳炎などに行う局所麻酔下の鼓膜チューブ挿入術(鼓膜にチューブを留置する手術)は鼻すすりをしても鼓膜がへこまなくなり癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの中耳炎に移行することを妨げたり、耳の圧迫感軽減に効果的です。チューブ挿入直後は鼻すすりができなくなるなどで、一時的な耳閉感の増悪をみることがありますが、長期的には有効な治療となります。

保存的治療や鼓膜チューブ挿入術を行っても効果がないような難治例の場合は、耳管ピン挿入術(鼓膜を切開してシリコン製の栓を耳管の中に入れる手術)が有効なことがあります

※耳管ピン挿入術は難治例が適応で施行可能な施設は限られますが、必要と診断した場合には手術可能な医療施設にご案内致します。

難聴

聴覚の機能が低下した状態を難聴といい、その程度は聴力検査で確認できます。

純音聴力検査にて25~40dB未満➡軽度難聴、40~70dB未満➡中等度難聴、
70~90dB未満➡高度難聴、90dB以上➡重度難聴 になります。

難聴の原因は様々で、音が耳に入ってから脳に伝わるまでのどこかの段階(外耳・鼓膜・中耳・内耳など)で障害が起こることで、音が聞こえにくくなったり全く聞こえなくなったり の症状が現れます。難聴は障害された部位によって伝音性難聴と感音性難聴、伝音性難聴と感音性難聴が合併した混合性難聴に分類されます。

突発性難聴

片方の耳が突然に聞こえなくなる病気です。突発性難聴は症状が起きると回復するのに時間がかかる傾向にあります。また、難聴の程度が重かったり治療の開始が遅れた場合は治療を行っても難聴が残ってしまう可能性があります。

突発性難聴の原因

血流障害やウイルス感染、ストレスなどが原因と推定されていますが解明はされていません。急激に発症する感音難聴のうち、原因不明のものを突発性難聴と呼んでいます。

突発性難聴の症状

突然発症する耳のつまり感、聞こえづらさ、全く聞こえない(高度の難聴)といった症状に加え、耳鳴やめまい症状を伴うことがあります。

突発性難聴の検査・診断
●聴力検査

聴力検査で音の高さごとの聞き取りのレベルを測定し、難聴の程度を評価します。

●画像検査(MRI検査)

聴神経(聞こえの情報を脳に送る蝸牛神経と平衡感覚についての情報を脳に送る前庭神経との2種類を合わせた総称のことで別名を内耳神経とも言う)に腫瘍ができていることが原因であったりすることもあるので経過によっては内耳のMRI検査を受けてもらう必要があります。

※MRI検査が必要と診断した場合には、検査可能な施設にご案内致します。

突発性難聴の治療
◎保存的療法

突発性難聴を発症したら出来るだけ早く(発症から2週間以内)治療を開始することが重要です。

難聴の程度にもよりますが、基本的にはステロイド剤をメインに血流や代謝を改善させる薬と神経に栄養を与える薬(ビタミンB12)を併用します。また発症前に疲労やストレスを感じていることが多いため、まずは心身ともに安静にしてストレスを解消することが大切です。

これらでも改善がみられない場合は、高圧酸素療法・ステロイド剤の鼓室内投与などが追加で行われることがあります。

※難聴の程度が重く重症の突発性難聴と診断した方には、より強い治療を行うため入院での治療を薦めさせて頂くことがあります。その際には入院可能な施設にご案内致します。

低音障害型感音難聴

ある日突然耳がつまった感じや聞こえづらくなったりする病気で(片側、両側の様々)、 時に繰り返すことがあります。突発性難聴と症状が似ていますが、こちらは1,000Hz以下の低音域の音だけが聞こえづらくなります。

低音障害型感音難聴の原因

完全な原因解明はされていませんが、比較的疲れやストレスで自律神経のバランスが崩れ、血流が悪くなる方が発症しやすい傾向にあります。

また、低音障害型感音難聴の中に蝸牛型メニエル病(蝸牛内の内リンパ液が流れている管内のリンパ液が増えすぎて内耳がむくみ、内耳の細胞を圧迫することにより真っ先に影響を受けやすい低い音が聞こえにくくなる病気。〖めまい症状を伴わないメニエル病〗とも言われる。)が隠れていることもあります。

低音障害型感音難聴の症状

急な耳のつまり感、耳のつまった感じがとれない、周りの音が違って聞こえる、自分の声が響くといった症状に加え、耳鳴を感じたりします。

低音障害型感音難聴の検査・診断
●聴力検査

聴力検査で音の高さごとの聞き取りのレベルを測定し、難聴の程度(特に低音域の聴力の状態)を評価します。

低音障害型感音難聴の治療
◎保存的療法

突発性難聴と似ている病気ですが、こちらの方が症状改善しやすいと言われています。 まず血流や代謝を改善させる薬と神経に栄養を与える薬(ビタミンB12)を服用してもらいます。それでも改善傾向がない場合は、内耳のむくみをとるため、蝸牛内に増えすぎた内リンパ液を排出させる浸透圧利尿剤(イソバイドなど)やステロイド剤の投与を行います。

また睡眠不足や不規則な生活、ストレスフルな日常生活がこの病気の悪化因子であるため生活改善にも取り組む必要があります。

騒音性難聴・音響外傷

騒音性難聴とは、騒音下での作業や仕事など長時間にわたって騒音に曝されているうちに徐々に進行する難聴の病気です。一方、ロックコンサートの演奏や爆発音など、強大な音のために急に起こる難聴を音響外傷と言います。

騒音性難聴・音響外傷の原因

長時間にわたる騒音や急激な強大音によって、内耳の蝸牛内にある有毛細胞(増幅された鼓膜から伝わる音の振動を電気信号に変えて脳に伝える役目をしている部分)がダメージを受けることです。

騒音性難聴・音響外傷の症状

多くの場合は耳の聞こえづらさに耳鳴り症状を伴いますが、めまい症状を生じることもあります。

騒音性難聴・音響外傷の検査・診断
●問診

騒音下作業の職歴やコンサートや爆発音などの強大な音に曝されたエピソードの有無がなかったかを確認することが診断に重要なポイントとなります。

●聴力検査

聴力検査で音の高さごとの聞き取りのレベルを測定し、難聴の程度を評価します。特に、C5dip(4000Hzの音に対する特徴的な聴力低下像)が認められれば比較的容易に診断されます。

騒音性難聴・音響外傷の治療
◎保存的療法

長期間音によってダメージを受け続けた有毛細胞を元に戻すことは、現在の医学では不可能です。進行を遅らせるために、遮音性の耳栓を使用する、長時間の音響被ばくを避ける、時々耳を休ませる、規則正しい睡眠や適度な運動を心がける、などが大切です。

一方急に起こった音響外傷には、ステロイド剤を中心に血流や代謝を改善させる薬と神経に栄養を与える薬(ビタミンB12)を併用して治療を行います。

●加齢性難聴(老人性難聴)

老化に伴って生じる聴力低下のことを加齢性難聴といいます。早い人だと40歳代から始まります。

加齢性難聴の原因

内耳の蝸牛内にある有毛細胞(増幅された鼓膜から伝わる音の振動を電気信号に変えて脳に伝える役目をしている部分)と脳の聴覚中枢の細胞が加齢によって減少していくのが主な原因です。また、喫煙・ストレス・動脈硬化なども聴力を低下させる原因になります。

脳に音の情報が入りづらくなってくると脳への刺激が少なくなるため、近年、加齢性難聴は認知症の発症リスクを高める大きな要因であると言われています。

加齢性難聴の症状

年齢とともに、音が聞こえづらくなっていきます。一般的には高い音から聞こえが悪くなります。この音は、体温計の音のような電子音(4000~8000Hz)なので初期にはあまり聞こえにくさを自覚することはなく、しばしば健康診断などの聴力検査で指摘されたりします。次に周囲の雑音で言葉が聞き取れなくなるようになり、やがて会話や日常生活で使う音の高さ(1000Hz前後)の聞こえも悪くなり、低音域も聞こえにくい状態となります。なお、左右の耳の聴力低下の進行具合はほぼ一緒です。

難聴が進行してくるとジージーやキーンといった耳鳴りを自覚するようになります。難聴がない人でも静かな場所にいると耳鳴りのような音を感じますが、普段は脳の調節機能によってそれは無視されます。しかし難聴になると、聞こえにくくなった音をなんとか聞き取ろうとして脳が音への感度を上げるため、音に対して脳が過敏に反応してしまいジージーやキーンといった耳鳴りが聞こえるようになると言われています。

加齢性難聴の検査・診断
●聴力検査

聴力検査で音の高さごとの聞き取りのレベルを測定し、難聴の程度や難聴の進行具合を評価します。

加齢性難聴の治療
◎保存的療法

残念ながら有毛細胞や聴覚中枢の細胞を復活させる方法は現状なく加齢性難聴を治すことはできません。 しかし補聴器を使用し調整次第で適合すれば、生活に必要な音を聞き取れるようになることが可能であり日常の生活をより充実したものにできる可能性があります。

補聴器は、そのままの状態では聞くことが困難とされる耳の遠い方に対して。音を増幅することで聞こえやすくなるというものです。音質が著しく改善するわけではないため装着することで以前と同様の聞こえ方が期待できるわけではありませんが、今まで聞こえなかった音が聞こえるようになることで、生活上不便を感じていた環境を変えられるようになります。

近年では、医師の指導のもと3か月補聴器を使い続けることで聞こえないことに慣れてしまった難聴の脳をトレーニングし、音に対する不快感を徐々に慣らしながら聞き取りを改善させようとする聴覚リハビリテーションが注目されています。 詳しくは〔補聴器外来〕をご参照ください。

耳鳴り

耳鳴り

周りでは全く音がしていないのに自分だけには音が聞こえる現象で、いわば耳の中で発生している雑音のことを言います。

耳鳴りの原因

外耳・中耳・内耳・聴神経(聞こえの情報を脳に送る蝸牛神経と平衡感覚についての情報を脳に送る前庭神経との2種類を合わせた総称のことで別名を内耳神経とも言う)・中枢神経(脳の神経)のいずれかの部位で聴覚系の異常が起きて発症します。

特に内耳の障害(加齢性難聴や急に耳が聞こえなくなる突発性難聴、メニエル病など)によるものが多いのですが、聞こえの神経に腫瘍ができる聴神経腫瘍には注意する必要があります。しかし、難聴がないのに耳鳴症状を認める方もおり、どうして耳鳴りが起きるのかは未だはっきりと解明されていないのが現状です。

耳鳴りの症状

周囲では音がしていないのに、耳の中でジー、キーン、ザー、ビュー、シューといった雑音が聞こえます。難聴がひどくなると耳鳴りは大きくなる傾向があります。また、過労やストレス、心因的要因によっても耳鳴りは強くなったりすることがあります。

耳鳴りの検査・診断

●問診

聞こえる音の種類・耳鳴りが聞こえる部位(片側・両側など)・耳鳴りの音の高さ・耳鳴りの音の強弱や拍動の有無・耳鳴りの持続時間などを確認します。

●耳・鼻・のどの観察

耳鳴りの原因となるような病気がないかを調べるために、耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で鼓膜や外耳道の観察を行います。また、鼻鏡や鼻内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で鼻腔を、のどの視診やのど内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で咽頭腔の観察を行うことがあります。

●聴力検査

難聴の程度評価(耳鳴りの患者さんの80~90%は難聴)や耳鳴りの原因となるような病気を調べるために行います。

●耳鳴り検査

ピッチマッチ検査で耳鳴りがどの程度の音の高さなのかを、ラウドネス検査でピッチマッチ検査で分かった耳鳴りの音の高さがどの程度の大きさなのかを検査することがあります。

●画像検査(X線撮影/CT検査/MRI検査)

中耳の病気の精査としてX線撮影やCT検査、聴神経腫瘍の精査としてMRI検査を行うことあります。

※MRI検査が必要と診断した場合は検査可能な医療施設にご案内致します。

耳鳴りの治療

◎保存的療法

原因の病気がはっきりしている場合は病気を治すことが原則となります。中耳炎が原因なら中耳炎の治療、突発性難聴が原因なら突発性難聴の治療、聴神経腫瘍が原因であれば聴神経腫瘍の治療(手術加療など)というように、それぞれに適した治療を行います。

しかし、加齢性難聴や原因不明な耳鳴りに対しては決定的な治療法や特効薬がないため、様々な治療法が試みられています。

●薬物療法

一般にまず行われているのは薬物療法で、血流や代謝を改善させる薬、神経に栄養を与える薬(ビタミンB12)、漢方薬(牛車腎気丸・釣藤散など)・精神安定剤などを内服して頂きます。

●TRT(音響療法)

薬物療法が不効な場合や発症してから時間が経っており慢性化しているような場合は、TRT療法(音響療法)を行います。 TRTとは耳鳴りの順応療法と言われ、耳鳴りはあっても気にならないようにさせるという治療法の一つです。耳鳴りをなくすというよりも、耳鳴りがあっても気にならない状態にする事が目的であることを意識しましょう。この治療にはある程度時間がかかります(約1,2年ほど)ので根気よく取り組む必要があります。

・難聴でない方(軽度の難聴)での耳鳴りに対するTRT➡サウンドジェネレーター

耳鳴りが気になるのを軽減させるために、テレビ・ラジオをつける、CDなどで音楽をかける、自然の音のBGMを流すといった方法で音の豊富な環境を作ったり、人と話したりしていろんな音を積極的に聞く方法があります。

ただ、テレビ・ラジオ・CDなどで音を聞いたり人と話すことを常に継続するのは難しいので、いつでもどこでも音が聞けるように人工の治療音を発生させる補聴器のような形をした耳鳴り治療器(サウンドジェネレーター)を使用する方法があります。

・難聴がある方のTRT➡補聴器

多くの場合、難聴によって必要な音が伝わらず、弱くなった音情報の電気情報が脳に届くと脳は弱くなった電気信号を検知し、様々な周波数の音をより強く取ろうと自ら電気信号を増幅しようと脳が過敏な状態になることで耳鳴りが発生します。

補聴器を調整し聞こえが悪くなった周波数の音を増幅することで正常に近い電気信号を脳に届けられるようになり、脳の過敏性が軽減して正常な状態に近づき耳鳴りの消失・軽減・緩和が期待できるのです。

●心理療法

カウンセリングによる耳鳴りへのアプローチ方法です。

耳鳴りは他人になかなか理解してもらえないという側面を持っているため、耳鳴りのある方は一人で抱え込んでしまいがちです。ストレスを抱えることによって、「この耳鳴りは永遠に続くのではないか」「もう治らないかもしれない」などネガティブな考え方になってしまい、そのストレスや不安感によって耳鳴りを悪化させてしまうという負のスパイラルに陥ってしまいます。

カウンセリングでは、自分の感じている耳鳴りの症状を話し、耳鳴りに関する誤解などを解いていく(耳鳴りはもう治らない➡耳鳴りは抑えられるかもしれないし、治らない可能性もあるかもしれないなど)ことで症状の改善を見守ります。
※カウンセリングが必要と診断した場合には、対応可能な施設にご案内致します。

匿名加⼯情報の作成と提供に関する公表