補聴器外来
補聴器外来とはただ補聴器を購入するための外来ではなく、補聴器が必要かどうかを判断し、試聴して頂く補聴器の調整や購入した補聴器の聞こえの確認・購入した補聴器の調整やアフターケアを、補聴器相談医と認定補聴器技能者が関わり合いながら行っていく専門外来です。補聴器が必要かどうか迷っている方、すでに補聴器を購入しているが合わなくなってきたと思われる方などがいらっしゃればお気軽にご相談ください。
補聴器とは
聴力が低下した方の、そのままの状態では聞くことが難しいとされる音を増幅して聞こえを補おうとする医療機器のことです。簡単に言うと小型の拡声器であり、補聴器のマイクで受診した音は電気信号に変換した後に内蔵されたアンプで増幅・加工され、レシーバーで調整された電気信号を再び音に戻し、大きくなった音がイヤホンから出力されることで聞こえを補います。
補聴器は人それぞれの聞こえに合わせた細かな調整が必要な複雑な機器です。聞こえの程度や感じ方は一人一人異なるので、個人に合わせた機器の選択および調整(フィッテイング)をしないと購入しても効果を実感できない可能性があります。
補聴器の役割
聴力が低下した人の聞こえを補うことです。必要な音を必要な音量に上げて会話を聞き取りやすくすることで、『家族や友人との会話』・『仕事でのコミュニケーション』・『テレビや映画を楽しむ』など、生活のさまざまな場面における言葉の聞き取り状況を改善させて、日常の生活をより充実したものにできる可能性があります。
また、補聴器は音を大きくするための機器ですが、必要以上に大きい音が出ると非常に不快で、場合によっては内耳を痛める可能性があります。そのため、補聴器には小さな音は大きくし、大きな音はそれ以上あまり大きくしないようにするという役割があります。
どのような補聴器にも、衝撃音に対する出力制限装置が搭載されており、突然の大きすぎる音に対応できるようになっています。また、聴力に応じた音量増幅の度合いをあらかしめ設定しておくことで、大きな音は穏やかな増幅をするようにしておくことも可能です。
補聴器装用の対象
加齢が原因による難聴の方・薬物や手術療法による治療では難聴を改善することが困難な方で、その中でも補聴器の装用で聴力の改善が期待でき、使用を希望される方になります。難聴の程度としては、一般的に片側もしくは両側の耳で中等度以上の難聴(聴力レベル40dB以上)の方としていますが、日常生活に不便がなければ必ず使用するというものではありません。あくまでも聞こえにくいことで困ることがあったら使用するものと考えてください。
難聴を放置しておくと。。。。
聞こえが低下すると、人とのコミュニケーションに不自由を感じはじめ、聞き返しが多くなり、会話がかみ合わないことが頻繁に起こるようになります。そうなると家族や周囲の人は難聴者と話すのが面倒になり、会話をする機会が少なくなりますし、難聴者もどうせ聞こえないからという思いから音を聞き取ろうとする努力をしなくなります。
すると耳から脳に伝達される情報が少なくなり(重篤な場合はほとんどゼロ)、脳への刺激が減ることで神経細胞への働きが弱まり、脳の萎縮がすすんで、認知症発症につながる可能性がでてきます。
また会話に参加できない、危険を察知する能力が低下する、支障をきたすので外にでるのがおっくうになるなどから社会的に孤立し、次第に抑うつ状態に陥っていくことになります。 これもまた、認知症発症への危険因子と考えられています。
補聴器の選択
補聴器には様々な種類があります。見た目の形が違うものがあれば、価格、搭載されている機能などで違いがでてくることもあります。多機能でオーダーメイドの形状といったとても高価なものもありますが、価格が高いからといって必ず合うわけではありません。
使わない機能がたくさんあっても大きく重くなるだけで無駄になってしまいます。ただ単に高価なものを選ぶよりも、補聴器のそれぞれの特徴を理解して、補聴器を使う目的(どんな場面かなど)や好みに合わせて聞こえ方・機能・フィット感・見た目・予算に合わせて、最適な補聴器を選ぶようにしましょう。
補聴器の主な種類
耳かけ型
耳にかけて使うタイプで、補聴器のスタンダードといってもよいスタイルです。軽度~重度の幅広い難聴(聴力レベル25dB以上)に対応できます。耳あな型に比べて操作が簡単です。また、とても小さくカラフルでおしゃれなデザインも増えていますし、機種が豊富で多様な調整機能を備えています。
やや目立つこと(最近は小型化がすすんでいます)、メガネと併用しにくいこと(コロナ禍だとマスクも)、汗が入りやすい(最近では汗に強い機種もでてきています)ことが難点です。価格は、片耳5~50万円台です。
耳あな型
耳の穴に入れて使用します。補聴器全体がすっぽりと耳の穴に入るもの(CIC型)と、大きめで耳のくぼみに装着するもの(カナル型)があります。軽度~高度の難聴(25dB~90dB)に対応できます。購入する際に耳の穴の型を取り、そこに部品を組み立てて収める(オーダーメイド)のが一般的です。
耳の穴に入れるため目立たず、耳介(動物の耳のうち、外に張り出て飛び出している部分のことで、音を集める働きがある)で集めた音を聞ける集音機能を生かすことができることもあり、聞こえ方が自然です。ただ出力が出にくく、ハウリングしやすい、小さいため操作や管理が厳しいなどの欠点があります。価格は、片耳8~50万円台で、耳あな型・ポケット型に比して比較的高価です。
ポケット型
本体を胸ポケットや首から掛けて装着し、コードで連結したイヤホンを耳の中に入れるタイプです。中等度~重度の難聴(40dB以上)に対応できます。本体が大きいため操作が容易で機種によっては高出力を出すことができます。本体が目立つことと、コードが邪魔になる場合があるという難点があります。価格は3~15万円で、耳かけ型・耳あな型よりも安価です。
補聴器常用の必要性
音は耳で聞きとりますが、音を聞き分け、その音が持つ意味を理解するのは脳です。聞こえによってもたされた音は電気信号として脳に伝わり、脳は音を情報として処理しています。
難聴の状態が続くと、脳は音の刺激が少ない状態に慣れてしまいます。このような刺激の少ない状態に慣れた脳のことを〖難聴の脳〗といいます。この難聴の脳に、聞き取りに必要な音量の音を補聴器でつたえると、雑音または騒音と判断し、不快感を覚えます。
そのため 補聴器の音に慣れるためには、〖難聴の脳〗を〘聞き取りに十分な音量でも聞き続けられる脳〙に変化させるトレーニングが必要です。
難聴の脳を変化させるトレーニング
補聴器で始めは7割程度の音量(多少うるさいが効果が感じられる音量)を入れ、定期的な調整を行いながら徐々に音量を上げていきま す。
すると脳が〘聞き取りに十分な音量でも聞き続けられる脳〙に変化していき、十分な音量でも補聴器を使い続けられるようになります このトレーニングに3か月間はかかります。またこの期間はうっとうしく感じても毎日(朝起きてから寝るまでの間)補聴器をつけ続けることが必要です。
補聴器外来 診察の流れ
1.耳鼻咽喉科一般外来を受診
耳鼻科的診察・聴力検査などを行い、治療が必要な病気がないかなどを診察します。また補聴器の適応の有無を判断します。
2.補聴器外来および語音聴力検査の予約
ご相談の上補聴器外来を予約します。補聴器外来を受診する前に、語音聴力検査(言葉の聞き取りの検査)を行います。この検査は補聴器をつける耳を決めるためや、身体障害認定のために必要となります。
3.補聴器外来を受診
補聴器相談医(日本耳鼻咽喉科学会認定)の資格を持つ医師と認定補聴器技能者が使用目的や使用環境などを確認しながら、補聴器に関する相談や説明を行います。また補聴器の機種選択・フィッティング(難聴者個々に合わせた調整)・装用指導を行い、試聴器をお貸出しします。
4.補聴器試聴&補聴器外来の再診
1~2週間ご自宅や普段の生活環境で使っていただき、再度補聴器外来を受診して頂きます。 どのような時にうるさく感じたか、どのような時に聞き取りづらかったか、音が響いたり気になる点はなかったかなど感想を伺い、必要に応じて再調整や機種変更などを行います。
その後、自宅や普段の生活環境での試聴・使用時の感想の確認・必要に応じて再調整・機種変更・貸出しを繰り返します。試聴時には、イヤーモルド(その人の耳の型をとった耳栓)を作成してお貸出しすることも可能です。
イヤーモルドを作成すると、耳にフィットするようになるため、ハウリング(フィットしていないと補聴器で増幅された音が再び補聴器のマイクに入ることで増幅されてピーピー鳴ってしまう現象)や紛失のリスクを減らします。
5.補聴器の作製・購入
本人の意向と、ご自宅や生活環境で補聴器装用効果を感じ、快適にお使いいただけるようになったら購入の検討になります。提示された購入費用に納得して頂ければ補聴器を作製し購入して頂きます。一方、補聴器装用効果があまり実感できない場合は補聴器を返却して頂いてもかまいません。
アフターケア
補聴器購入後も、聞こえの状態はかわりますし、ライフスタイルの変化で必要な聞こえ方が変わってくることもあります。定期的に難聴者一人一人の状況に合わせて調節を行うことで長く快適にお使いいただけます。補聴器の掃除や定期点検も行います。
補聴器の補助金
2018年より補聴器の購入費用が医療費控除適応になりました。
手順は以下のようになります。
- 受診して「補聴器適合に関する診療情報提供書」を受け取る
- 補聴器購入時に販売店にその書類を提出
- 販売店から提出した書類の写しと補聴器の領収書を受け取る
- 確定申告時に申請
※医療費控除を受け取るには、補聴器を購入する前に補聴器相談医に診療情報提供書を書いてもらう必要があります。
●江戸川区在住の65歳以上の住民税非課税世帯の方で
- 両耳の聴力が40dB以上70dB未満(中等度難聴)の場合
- 両耳または片耳の聴力が40dB未満(軽度難聴)の場合でも耳鼻咽喉科の医師が補聴器の必要性があると判断した場合
➡35.000円を上限に江戸川区から補聴器購入費用の助成を受けられます。
●難聴のため身体障害認定を受けられている方は、障害者総合支援法による『補装具費支給制度』が受けられます。
身体障害者障害程度等級のいずれかに該当した場合、お住いの市区町村の福祉課へ申請手続きをすることで、補聴器など補装具の費用が支給される制度です。自己負担額は、原則1割負担となります(所得によっては例外もあります)。
障害程度等級表と支給される補聴器の違い |
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2級 |
両耳の聴力レベルが、それぞれ「100dB」以上のもの |
高度難聴用 補聴器を支給 |
3級 |
両耳の聴力レベルが、それぞれ「90dB」以上のもの ➡耳介に接しなければ大声語を理解できないレベル |
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4級 |
➀両耳の聴力レベルが、それぞれ「80dB」以上のもの ➡耳介に接しなければ語声語を理解できないレベル ②両耳による普通和声の最良の語音明瞭度が「50%」以下のもの |
重度難聴用 補聴器を支給 |
6級 |
➀両耳の聴力レベルが、それぞれ「60dB」以上のもの ②一側耳の聴力レベルが「90dB以上」 もう片方の聴力レベルが「50dB」以上のもの |
●江戸川区在住の18歳未満で身体障害者の交付対象とならない中等度難聴児で
- 両耳の聴力レベルが概ね30dB以上であり、身体障害者手帳(聴覚障害)交付の対象となる聴力ではないこと
- 補聴器の装用により、言語の習得など一定の効果が期待できると医師が判断する者
- 対象児童の属する世帯に区民税所得割額が46万円以下の場合
➡137.000円(補聴器1台あたり 原則して装用効果の高い片耳)を上限に江戸川区から補聴器購入費用の助成を受けられます。
※基準額と補聴器の購入費用を比較して少ない方の額の9割の助成を受けられます。また区民税非課税世帯・生活保護世帯は10割の助成となります。