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インフルエンザ influenza

インフルエンザ

毎年流行するインフルエンザウイルスによる急性の呼吸器感染症です。38℃以上の発熱・寒気・全身の痛みやだるさ・のどの痛み・鼻汁などかぜの症状に似ていますが、かぜに比べると症状が重くなりやすいのが特徴です。

乳幼児からご高齢の方まで幅広い年齢層の方にみられる感染症ですが、2020年以降は新型コロナウイルス感染症の流行により(ほとんどの方がマスクを装着するようになった、コロナ禍により感染症対策〔手洗い・手指消毒など〕が徹底された、ウイルス干渉〔あるウイルスが流行すると他のウイルスが流行しないというもの〕がおきたなどが理由)減少しています。

インフルエンザの原因

季節的に流行するA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザが主な原因です。
(インフルエンザウイルスにはA型・B型・C型・D型までありますが、人間に感染するのはA型・B型・C型で主な原因はA型・B型になります。)

A型インフルエンザ

人にも動物にも感染し、他と比べ強烈な症状が出やすい型です。たくさんの亜型があって、形を変えながら毎年のように流行しています。
症状➡39℃を超える高熱・肺炎を含む、呼吸器系の症状・食べ物を飲みこむのが困難なほどの、のどの痛み・関節痛/筋肉痛・脳炎や脳症などの合併症を引き起こすことがある

B型インフルエンザ

人のみに感染します。以前は数年単位で定期的に流行していましたが、ここ最近は毎年流行しています。A型インフルエンザのように、大流行を起こすことはあまりないと言われています。
症状➡お腹の風邪の症状に近く、下痢やお腹の痛みを訴えることが多い

日本では例年11月から4月ごろまでが流行の期間で、寒くなる12月頃から急激に増加し、ピークを2月初め頃に迎え、4月に終息する傾向にあります。

飛沫感染(感染者のくしゃみ・咳などの時に出る飛沫物(ツバ)や鼻汁のしぶきなどを吸い込むことによって感染するなど)で感染することが多いのですが、や空気感染(飛沫物から水分が蒸発した細かい粒子が空気中を浮遊しそれを吸い込んで感染するなど)・接触感染(ウイルスのついた手指やものに触れて感染)でも感染します。

インフルエンザの症状

1~5日間の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)を経て、突然の高熱(38~39℃以上)と頭痛、関節痛、筋肉痛と共に、鼻汁・咽頭痛・咳などの上気道症状を認めます。腹痛・嘔吐などの消化器症状を認めることもあります。全身倦怠感などの全身症状が強いことが特徴です。

多くの場合特に治療を行わなくても約1週間で自然に治癒しますが、学童期~40代前半くらいまでは肺炎や気管支炎など呼吸器系の病気を合併することがあります。

抵抗力の弱い高齢者では肺炎が重症化したり、乳幼児だと中耳炎やけいれん・稀に急性脳症(脳の急激なむくみによる意識障害・けいれん・血圧/呼吸の変化・嘔吐など)などを合併しやすく、喘息などの呼吸器の病気や腎臓病・糖尿病・免疫不全など基礎疾患をもつ方では肺炎や基礎疾患の悪化を生じることがあるので十分に注意する必要があります。

インフルエンザの検査・診断

●インフルエンザウイルス抗原迅速検査

インフルエンザウイルス抗原迅速診断キットを使用します。
簡単な検査で10~15分で結果がでますが、発症直後だとウイルスの増殖が十分ではなく、検査に必要なウイルスを感知できないため、一般的に検査は発症後6~48時間以内に受けることが望ましいとされています。

インフルエンザの治療

◎保存的療法

主な治療法は抗インフルエンザ薬の投与です。抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスを殺すためのものではなく、あくまでもインフルエンザウイルスが体内で増殖するのを抑えるためのものです。インフルエンザウイルスが増えてしまってからでは効果が期待できないため、発症後48時間以内に投与することが大事です。

その他、発熱や全身の痛み・のどの痛みに対して解熱鎮痛薬、のど症状に対して粘膜改善薬/去痰薬・抗炎症薬・空咳症状があれば咳止め薬などの内服薬やトローチ・うがい液などの外用薬、鼻症状に対して抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン受容体拮抗薬などを投薬します。

●抗インフルエンザ薬
タミフル
〇タミフル®

飲み薬の治療薬で生後2週から服用できます。
1日2回5日間内服します。

※タミフルの副作用で異常行動がみられることが指摘されていましたが、2018年にタミフルと異常行動の因果関係は認められないとされ、10代未成年での使用原則中止は解除されることになりました。また、インフルエンザのためタミフルを飲んでも飲まなくても異常行動(特にインフルエンザを発症した1~2日)はいずれも10%ほどみられるという事がわかったため、インフルエンザを発症した1~2日の間、保護者は目を離さないことが必要であると言われています。

リレンザ
〇リレンザ®

吸入薬の治療薬で5歳以上の上手に吸入できる方に使用します。
1日2回5日間吸入します。
吸入薬のため全体的に副作用が出にくいです。喘息がある方では、気管への刺激となって喘息発作を誘発する可能性があるので注意が必要です。

イナビル
〇イナビル®

吸入薬の治療薬で年齢制限はなく上手に吸入ができれば(約5歳以上)使用します。
1回のみ吸入で治療が完了します。(10歳未満-2吸入・10歳以上-4吸入)

吸入薬のため全体的に副作用が出にくいです。喘息がある方では、気管への刺激となって喘息発作を誘発する可能性があるので注意が必要です。 体格のよい10歳未満の小児には容量が不十分のことがあるため、複数回吸入するリレンザが勧められます。

〇ゾフルーザ®

飲み薬の治療薬で10kg以上の小児から体重と年齢によって投与量が変わる薬です。 1回のみ服用で治療が完了します。

タミフル・リレンザ・イナビルのようなノイラミニダーゼ阻害剤は増殖したウイルスが細胞の中からでてくるのを抑えますが、ゾフルーザのようなエンドヌクレアーゼ阻害剤はウイルスの細胞内での増殖自体を抑える働きがあるため、体内からより早くインフルエンザウイルスが排泄されることが特徴です。

ただ、薬価が高いのが難点となります。

インフルエンザの養生3原則

安静:まずは無理をせず安静にしてゆっくり休みましょう。
保温:部屋を温かくして保温を心がけ、体を冷やさないようにしましょう。
栄養:免疫力を高めるためには栄養がかかせません。

インフルエンザでは高熱(38~39℃以上)が出ることが多く、脱水を予防するためにもこまめな水分補給が重要です。食欲がないときは、刺激物は避けて喉越しの良い飲み物や食べ物(プリン・ゼリー・ヨーグルト・ポタージュスープなど)を食べられるだけ食べましょう。

食欲があれば野菜スープや雑炊など口当たりもよく栄養を補給しやすい食べ物を食べるとよいです。雑炊を食べる際に、梅干し・昆布・たまごなどをトッピングするとたんぱく質・ミネラルなども摂取できます。

自分でできる予防として

流行しているときは人混みを避け、手洗い・うがい・身の回りの消毒・マスク着用などによって感染するルートを断つことが大切です。

インフルエンザウイルスに対する予防方法

インフルエンザのワクチン

インフルエンザのワクチン(任意接種・不活化ワクチン)で予防します。

ワクチンは毎年、世界各国での流行状況などをみて、国内での流行を予測して作られていますが、インフルエンザウイルスの感染を完全に予防することはできません。ただし、インフルエンザの発病を低減させる効果(大人は70~90%ぐらい、小児の場合は60~80%ぐらい)やインフルエンザにかかった時の重症化を防ぐ効果が期待できると言われています。

特に抵抗力の弱い乳幼児(1歳以上)や高齢者、喘息などの呼吸器の病気や腎臓病・糖尿病・免疫不全など基礎疾患がある方やその家族は接種することが望ましいといえます。

ワクチン接種してから抗体がつくられるまでに約2週間かかり、約5か月間持続します。 インフルエンザの流行期間は通常12月から翌年3月頃なので、10~12月中旬までには予防接種を終えることが望ましいです。

インフルエンザワクチンの接種時期と回数

ワクチン接種してから抗体がつくられるまでに約2週間かかり、約5か月間持続します。 インフルエンザの流行期間は通常12月から翌年3月頃なので、10~12月中旬までには予防接種を終えることが望ましいです。

〇生後6か月以上~13歳未満

1回目:10月ごろ 
2回目:1回目の接種から2~4週間(できれば4週間)後

※13歳未満の場合は、免疫がまだ脆弱なため1回目の接種では十分な抗体が獲得できません。そのためブースター効果として2回目の接種が必要とされています。2回目接種してから2週間後に抗体がつくられます。

〇13歳以上

1回目:11~12月ごろ

※13歳以上の場合、基本的には1回目の接種で十分な抗体が獲得できますが、基礎疾患のある方で、著しく免疫が抑制されている状態にある方などを中心2回目接種(1~4週間後 )が可能です。

登園・登校について

インフルエンザは、学校保健法によって管理を受ける「出席停止の措置が必要な病気」の一つです。インフルエンザと診断された場合、発症後5日を経過し、かつ解熱してから2日(幼児の場合は3日)を経過するまでは出席停止となります。発症日や解熱日は含まず、その翌日を1日目として数えます。

例:2月1日に発症し、2月4日に熱がさがっていれば、2月7日(乳幼児は2月8日)から登校・登園可能となります。 

《インフルエンザ出席停止期間早見表》

〇7歳以上

インフルエンザ出席停止期間早見表

〇7歳未満

インフルエンザ出席停止期間早見表