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小児耳鼻咽喉科 pediatric_otolaryngology

小児耳鼻咽喉科

小児特有とされる耳・鼻・のどの病気を中心に診察・検査・治療を行う診療科です。 小児は単に大人を小さくした存在ではありません。生まれてから、約体重25kgぐらいにあるまでの小児期は成人と比較すると体の機能にかなりの差異があります。

また構造的には

1.小児の場合、副鼻腔(鼻腔の周りにある空洞のことで、小さな穴で鼻腔内とも交通している)〔鼻の病気:副鼻腔炎の項を参照〕と耳管(耳と鼻をつなぐ細い管状の通路)〔耳の病気:耳管機能障害(耳管狭窄症・耳管開放症)の項を参照〕が未発達である、また耳管が短く地面に対して水平に近い
➡➡鼻/のどの炎症が比較的容易に耳管を経由するため中耳炎を発症しやすい

2.アデノイドという鼻の奥に存在するリンパ組織の塊が小児期にはあり、(大人になるにつれて消退傾向がある)咽頭扁桃として『感染防御の場所』の役割を担っている
➡➡アデノイドの炎症が耳管を経由することで中耳炎を発症しやすい

3.小児は副鼻腔の空洞が小さく、鼻腔に接している
➡➡風邪(特に鼻風邪)をひいているとき、大人であれば症状を抑えている間に改善することが多いが、小児は副鼻腔炎になりやすく、鼻づまりの影響で耳管機能が障害されて中耳炎を発症する

4.口蓋扁桃(口蓋垂(いわゆる喉ちんこ)の左右に一個ずつあるリンパ組織)〔喉の病気:急性扁桃炎の項を参照〕は3歳頃から7~8歳頃にかけて生理的に肥大する傾向があり、 アデノイドは4~6歳頃に最も肥大化し、10歳を過ぎると急速に小さくなる傾向にある
➡➡口蓋扁桃およびアデノイドが異常に肥大してしまうと上気道(鼻~喉頭まで)が狭くなり、いびき・睡眠時無呼吸・口呼吸・食べ物の飲み込みづらさを認めるようになる

といったものがあり、大人以上に器官同士の相互関係が深いのが特徴です。そのため小児の場合は、鼻水がでるからといって鼻だけを診るのではなく、耳・鼻・のど全体を診察し、その上で適切な検査と処置・治療を行うことが大切になってきます。

当クリニックでは、小児によく診られる中耳炎・扁桃炎・小児副鼻腔炎・低年齢化傾向のあるアレルギー性鼻炎(特にスギ花粉症)など、小児の耳・鼻・のどの病気に対応致しますので、何でもお気軽にご相談ください。

このような症状がお子様に見られたらご相談ください。

  • 音量を大きくしてテレビを観る 
  • 聞き返しが多い、返事をしない 
  • 聞こえが悪くなってきた 
  • 耳をよく触る 
  • いつも鼻がつまっている 
  • よく鼻水が出ている 
  • 鼻風邪をひきやすい 
  • よく鼻血を出す 
  • よく口をポカンと開けている 
  • よくのどを痛がり、発熱する 
  • 食べ物が飲み込みづらい 
  • 睡眠中にいびきがひどい 
  • 苦しそうな咳をしている など

小児に多く見られる耳・鼻・のどの代表的な病気

急性中耳炎

風邪(特に鼻風邪)を引いた時に発症しやすい中耳炎で、特に生後6カ月~5歳くらいまでの小児に多くみられます(小学校に入学する頃には、耳管が細長くなりかつ地面に対して垂直になってくるため、中耳炎を起こしにくくなってきます。)

急性中耳炎の原因

細菌やウイルスなどの病原体が鼻/のど(特に鼻の奥の突き当たりにある上咽頭)から中耳へと耳・鼻・のどをつなぐ「耳管」という部分を通って侵入し、そこで感染することで炎症が起きる病気です。しばしば中耳に膿が溜まることがあります。

急性中耳炎の症状

ズキズキする激しい耳の痛み、発熱、聞こえづらさ、耳だれ(耳から膿が出る)などがあります。言葉がまだ話せない乳児(1歳未満)などの場合は言葉で痛みを訴えられないために、機嫌が悪くなってぐずる・しきりに耳を触る・不機嫌になるといった様子がみられます。夜泣き・ミルクの飲みが悪いなどの様子が見られることもあります。

急性中耳炎の診断・検査

●耳の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、鼓膜が赤くなっているかや腫れがないか(膿が溜まっていないか)、耳だれがないかを確認します。

●培養検査

耳だれや膿(鼓膜を切開して排出された時)があれば行います。

急性中耳炎の治療

◎保存的療法

消炎剤や抗生物質(細菌性の場合)の内服、場合により抗生物質の点耳液で治療を行います。 多くは急性鼻炎や急性咽頭炎・急性扁桃炎が原因になっていることが多いので、原因になっている病気の治療も行います。

◎手術的療法

また膿が溜まって鼓膜の腫れがひどくて痛みが強い時や発熱を伴っている場合は、特殊な機器で局所麻酔(10分間ほど横になっておとなしくできない場合は、麻酔のスプレーを鼓膜に噴霧)を行った後に鼓膜切開排膿術(鼓膜を切開して溜まっている膿を排出する手術)を行います。

~保護者の方の不安点~
鼓膜の切開を行うことにより、耳が聞こえなくなるのではないかと心配なされる保護者の方がよくいらっしゃいますが、鼓膜はすぐに再生する力を持っているので、聴力に問題を生じることはありません。ご安心ください。

滲出性中耳炎

鼓膜の奥の中耳に滲出液という液体が溜まる中耳炎です。

滲出性中耳炎の原因

急性中耳炎が長引く・急性中耳炎を繰り返し発症するなどが原因となって生じる場合と副鼻腔炎に伴って生じる場合が多いです。浸出液はサラサラしたものから粘り気のあるものまで様々ですが、小児では粘り気のある液体が溜まることが多く、聴力の低下も現れがちです。小児に多い病気ですが成長するにつれて徐々に起こらなくなってきます。

滲出性中耳炎の症状

耳の痛み、発熱、耳だれ症状はなく、耳の聞こえづらさや耳のつまり感などが主症状となります。そのため病気に気づくのが遅くなってしまうこともしばしばあります。小児に滲出性中耳炎があり放置をすると、言語の学習が遅れて言語の発達が遅くなったり、先生の言うことが聞き取りづらくて学習能力などにも影響を及ぼすことがあります。

【注意点】
お子さんの名前を呼んでも反応がない、TVの音量が大きい、大きな声で話すなどの様子があるようなら滲出性中耳炎の可能性がありますので早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

滲出性中耳炎の検査・診断

●耳の観察

鼓膜を耳鏡や耳内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察し、鼓膜から透見される滲出液の確認を行います。

●聴力検査

滲出性中耳炎の状態の程度や治療方針を決めるために行うことがあります。7歳以上であれば検査可能です。

●ティンパノメトリー

鼓膜の動きやすさを調べる検査で、滲出性中耳炎の状態の程度や治療方針を決めるために行います。聴力検査と違って、乳幼児でも可能な検査です。

●画像検査(X線撮影/CT検査)

滲出性中耳炎の状態の程度や治療方針を決めるために行うことがあります。

滲出性中耳炎の治療

◎保存的療法

粘膜改善薬/去痰薬や鼻炎症状(鼻汁・鼻づまり)があれば抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン受容体拮抗薬・咽頭炎症状があれば抗炎症薬などの内服薬の処方と来院時には耳管通気(鼻と耳をつなぐ耳管に空気を通すことで、中耳に溜まった滲出液の排出を促したり、閉じていた耳管を開放する治療)という処置を行います。

内服治療などで改善が認められない場合や滲出性中耳炎を繰り返しやすい場合は、ご自宅でも《自己通気療法》を行うことをお勧め致します。

《自己通気療法について》
プー

【オトヴェント】という器具を用います。【オトヴェント】は鼻で膨らませるいわゆる鼻風船であり、それを使用することで耳管を経由して中耳腔に空気を入れることができ、中耳内の換気を促して滲出性中耳炎を治療に導くといったものです。

必要以上に圧がかからないため安全で、自宅で何回も繰り返して行うことが出来ます。 飛行機に乗ると耳がつまって中耳炎になりやすい方、ダイビングをしたいけど耳抜きがうまくできない方にも有効です。

さらに詳しく知りたい方へ
詳しくは株式会社名優のサイトをご覧ください。

株式会社名優

◎手術的療法

保存療法を行っても改善がない場合は特殊な機器で局所麻酔を行った後に鼓膜切開術(鼓膜を切開して溜まっている滲出液を排出させる手術)を行ったり、滲出性中耳炎を繰り返す場合は鼓膜チューブ挿入術(鼓膜にチューブを留置する手術)を行うこともあります。

保存療法を行っても改善がない場合は特殊な機器で局所麻酔(10分間ほど横になっておとなしくできない場合は、麻酔のスプレーを鼓膜に噴霧)を行った後に鼓膜切開術(鼓膜を切開して溜まっている滲出液を排出させる手術)を行ったり、滲出性中耳炎を繰り返す場合は鼓膜チューブ挿入術(鼓膜にチューブを留置する手術)を行うこともあります。

※鼓膜にチューブを留置することが必要で処置中におとなしくできない小児の場合は、全身麻酔下での対応となります。その際は、手術可能な医療施設にご案内致します。

小児副鼻腔炎

小児副鼻腔炎

小児の鼻の副鼻腔(鼻腔の周りにある空洞のこと)〔鼻の病気:副鼻腔炎の項を参照〕に急性(発症から4週間以内)に炎症が起きた状態のことを言います。

副鼻腔は1~2歳位から徐々に発達(空洞が大きくなる)し18歳前後で完成します。2~3歳位の年齢では副鼻腔はまだ大きくなく、病気として治療が必要な副鼻腔炎を起こすことはほぼないのですが4~5歳以上になると副鼻腔炎が起こるようになります。

小児では副鼻腔の空洞が非常に小さく鼻腔にすぐ接しているうえに、鼻腔の広さも大人より狭いため鼻風邪の鼻水/鼻汁や粘膜の腫れで容易につまりやすい構造になっています。(鼻腔がつまると副鼻腔の換気が悪くなります。)

また乳幼児(0~6歳未満)は免疫も未発達であるため、風邪のウイルスや引き続いての細菌感染も起こしやすく、保育園・幼稚園などの集団生活から感染の機会も多くなります。

小児副鼻腔炎の原因

乳幼児ではほとんどが風邪の鼻炎に引き続いてまたは鼻炎と同時の感染によって起こるため、急性の炎症によるものが大半を占めています。そのため風邪の急性鼻炎と合わせて急性鼻副鼻腔炎と呼ばれています。

風邪後5日程度であればウイルスが副鼻腔に感染していると考えられますが、1週間以上鼻汁症状や鼻づまりが続き、持続的に黄色または緑色の粘性もしくは膿性の鼻汁を認めている場合は細菌の感染に移行していることが疑われます。

小児の場合、アレルギー性鼻炎やアデノイド肥大(鼻の奥にある扁桃)があると治りにくいことがあります。また風邪をひくたびに再発を繰り返すのが特徴です。

小児副鼻腔炎の症状

膿性鼻汁(最初はさらさらした水様性の状態ですが、次第にドロッとした悪臭を伴う黄色や緑色の膿汁に変わってきます)、鼻づまりを起こしますが小児では訴えない場合も多く、後鼻漏(鼻汁が口や喉に落ちてくるもの)による痰/咳症状、鼻づまりによるいびき/口呼吸で発見されることがあります。

細菌感染が高度になって副鼻腔内に膿がたまると、鼻内の悪臭・頭痛・顔面痛を訴えることがありますし、副鼻腔炎が原因で細菌が中耳に入ると急性中耳炎を併発することもあります。

小児副鼻腔炎の検査・診断

●問診

症状の確認を行います。

●鼻腔の観察

副鼻腔からの膿流出・後鼻漏の有無確認やアデノイドの状態を鼻鏡や鼻咽腔内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で観察することで診断を行います。

●培養検査

膿性鼻汁や後鼻漏症状があり、細菌の感染が疑われる場合は培養検査を行います。

小児副鼻腔炎の治療

◎保存的療法

自然に治ることもしばしばありますが、抗生物質・粘膜改善薬/去痰薬・抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン受容体拮抗薬などの内服薬による薬物療法が中心となります。2歳以上でアレルギー性鼻炎があれば点鼻薬を併用します。また、来院時の膿汁吸引などの鼻処置やネブライザー治療が有効です。

小児の場合、鼻をかむことが出来ないこともあるため市販の鼻吸引器を使用して、吸引してあげることをお勧めします。

小児慢性副鼻腔炎

小児の鼻の副鼻腔(鼻腔の周りにある空洞のこと)〔鼻の病気:副鼻腔炎の項を参照〕に慢性(2~3か月以上にわたって継続)に炎症が起きた状態のことを言います。

小児慢性副鼻腔炎の原因

4~6歳頃の副鼻腔は小さいながらも鼻腔との通路が広く炎症を起こしやすいのですが、その分排泄されやすく治癒しやすいのが特徴となります。

しかし、6歳過ぎると副鼻腔と鼻腔との通路が狭くなるので急性鼻炎・急性鼻副鼻腔炎などの炎症が移行して慢性しやすくなることに加え、アレルギー性鼻炎を合併していると鼻粘膜の腫脹や鼻汁によって炎症が長引きやすくなります。またアデノイド肥大や、集団保育のお子さん(風邪のウイルスをもらいやすい)も炎症が長引く原因となります。

小児慢性副鼻腔炎の症状

2~3カ月以上も鼻汁(多くは粘性または膿性)、鼻づまり、後鼻漏(鼻汁が口や喉に落ちてくるもの)、後鼻漏による痰がらみや咳の症状が続き、副鼻腔に持続的に膿がたまる影響などにより、鼻内の悪臭や頭重感を感じることがあります。

また、匂いを感じる嗅裂部という場所の粘膜が腫れたり、長引く炎症により嗅神経にダメージが加わることで嗅覚障害を生じることがあります。いずれも小児の場合は症状を訴えないことが多いため家族が気をつけてあげることが大事です。

小児慢性副鼻腔炎の検査・診断

●問診

症状の確認を行います。

●鼻腔の観察

鼻鏡や鼻咽腔内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で副鼻腔からの鼻汁流出・後鼻漏の有無・鼻茸(鼻ポリープ)の有無・慢性副鼻腔炎の増悪因子となる鼻腔形態(鼻中隔の彎曲や中鼻甲介蜂巣の存在など)の確認などで診断を行います。

●画像検査(X線撮影/CT検査)

小児慢性副鼻腔炎は鼻腔内にあまり異常所見が見られない事もあり、多くの場合は副鼻腔のX線撮影やCT検査が必要になります。特にCT検査は、病変の部位・程度・骨構造を的確に診断するために最適な検査です。

小児慢性副鼻腔炎の治療

◎保存的療法

マクロライド系の抗生物質を少量、2~6ヶ月投与する治療法(マクロライド少量長期投与)が有効です。抗生物質ですが、抗菌能を期待しているのではなく、マクロライドのもつ抗炎症作用・粘液の産生作用・粘液線毛機能(鼻や気管などを綺麗に保つ機能)低下を改善する作用が慢性副鼻腔炎の治療に有効だと考えられています。

補助的には粘膜改善薬/去痰薬や抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン受容体拮抗薬などを内服します。アレルギー性鼻炎があれば点鼻薬を併用します。また、来院時の鼻汁吸引などの鼻処置やネブライザー治療が有効です。 小児の場合、鼻をかむことが出来ないこともあるため市販の鼻吸引器を使用して、吸引してあげることをお勧めします。

小児慢性副鼻腔炎の場合、成長と共に鼻腔/副鼻腔が大きくなって通気が改善し、風邪をひく機会も減少することで自然に改善することも期待ができるのが特徴です。

◎手術的療法

小児では骨が発達途上であるため、大きな鼻茸(ポリープ)がある場合を除き、手術は基本的に行いません。 ただ鼻づまりや鼻汁の停滞の原因となるアレルギー性鼻炎やアデノイド肥大があれば手術加療の検討も行う必要があります。

小児アレルギー性鼻炎

ハウスダスト・カビ・その他花粉や様々なものに対して、鼻粘膜がアレルギー反応を起こして色々な症状を引き起こす病気です。

小児アレルギー性鼻炎の原因

小児アレルギー性鼻炎も大人と同様、一年中症状が出る通年性アレルギー性鼻炎と特定の季節だけに症状を起こす季節性アレルギー性鼻炎に分けられます。

通年性アレルギー性鼻炎

ダニ(ダニの糞や死骸)やホコリ(ハウスダスト)・カビ・ペット(犬・猫)のフケなど、1年中存在するアレルゲン(アレルギー反応を起こす原因物質のこと、抗原ともいう)によって発症します。季節に関係なく症状が起こりますが、ダニの死骸などが増える季節の変わり目や部屋を密閉にする冬場に症状がひどくなる傾向があります。

季節性アレルギー性鼻炎

最も多いスギ花粉症が有名ですが、スギ以外にもヒノキ・シラカバ・イネ科の植物(カモガヤ/オオアワガエリ)、ヨモギ、ブタクサなどの花粉がアレルゲンとなってその花粉が飛散する時期に発症するため、春先だけでなく様々な季節に発症する可能性があります。

小児アレ

ルギー性鼻炎の原因の第1位はホコリ(ハウスダスト)ですが、最近ではスギ花粉症がとても増えています。

小児アレルギー性鼻炎の特徴

1.低年齢化と有病率(小児の中でアレルギー性鼻炎を病気として持っている割合)の増加

以前より通年性アレルギー性鼻炎はより低年齢で発症(学童期で有病率が40%前後と最多)し、花粉症(特にスギ)はそれより高い年齢で発症するとされてきましたが、小児におけるスギ花粉症の有病率については5~9歳(2008年:13.7%➡➡2019年:30.1%)/10~19歳(2008年:31.1%➡➡2019年:49.5%)と増加しており、低年齢化傾向にあることが分かると思います。年齢でいうと0~1歳位から通年性アレルギー性鼻炎がみられることもあり、1歳以上で花粉症が発症することもあります。

考えられる要因は様々ありますが、食べ物(マーガリンや菓子パンなどトランス脂肪酸を多く含んだ食べ物などによりアレルギー疾患になりやすくなる)の変化・空気中の窒素酸化物(高温で物が燃えるときに発生する物質)の増加・黄砂(黄砂自体はアレルギー反応を誘発しないが、黄砂にアレルギーを誘発する大気汚染物質が付着しているため)の増加・住んでいる環境の変化などが挙げられます。

2.かゆみに伴った身体的サインの増加

大人に比べて鼻や眼のかゆみ症状がでやすいため、鼻いじり・鼻こすり・目こすり・顔しかめの行為や鼻前庭炎(鼻いじり・鼻こすりの影響)〔鼻の病気:鼻前庭炎の項を参照〕などを認めます。

3.鼻づまりに伴った症状の増加

元々鼻腔が狭いため、鼻づまりやそれに伴った症状(いびき・無呼吸など)を生じ、幼児期(1~6歳)の不眠・不機嫌、学童期(6~12歳)の集中力の低下などにつながることがあります。また、副鼻腔炎や中耳炎を合併しやすくなります。

4.アレルギーマーチ

年齢とともにアレルギーの病気が形を変えて現れることをアレルギーマーチと言います。小児のアレルギーの病気の一般的な順番はアトピー性皮膚炎・食物アレルギーに始まり、小児気管支喘息・アレルギー性鼻炎が前後して生じ、大人の気管支喘息に発展します。

早期にコントロールしておけば、アレルギーマーチの発症を抑制することが出来るので、そのためにもアレルギー性炎のコントロールが大切になります。

≪アレルギーマーチ≫

アレルギーマーチ

小児アレルギー性鼻炎の原因

鼻に有害な異物(アレルゲン/抗原)が入ってくると、それを体内に入れないようにするために、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった防御反応を起こします。防御反応が過剰になって 本来なら無害なものにも反応してしまうのがアレルギー性鼻炎です。

特定の花粉やダニ・ハウスダストなどを身体内の免疫細胞が異物として認識して抗体を作ってしまうため、その異物が入ってくると鼻の粘膜で免疫反応が起き免疫細胞の1つである肥満細胞からヒスタミンが出て粘膜の神経や毛細血管を刺激して様々な症状を引き起こします。

小児アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎の3大症状として「透明のさらさらした水様性の鼻水・連続するくしゃみ・鼻づまり」があります。大人よりも鼻づまり型が多く、くしゃみ型は少ないです。

鼻以外の症状として、眼のアレルギー症状である目のかゆみ・充血・涙目、皮膚のアレルギー症状である皮膚のかゆみ・耳の中のかゆみ、のどのアレルギー症状である喉のかゆみや違和感、鼻づまりに伴う頭痛・耳が詰まった耳閉感などがあります。

ただ小児の場合、こうした直接的な症状を訴えることが少なく、逆にアレルギー性鼻炎のサインをきっかけにアレルギー性鼻炎が発見されることがよくあります。

≪アレルギー性鼻炎のサイン≫

【注意点】
お子さんのしぐさのみからアレルギー性鼻炎を疑うのは難しいかもしれませんが、よく鼻血を出すというケースでは、アレルギー性鼻炎が背景にある可能性を意識するとよいかもしれません。 また、アトピー性皮膚炎や小児気管支喘息などのアレルギー性の病気があって、アレルギー性鼻炎のサインが出ている場合はアレルギー性鼻炎の可能性が高いのでできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。

小児アレルギー性鼻炎の検査・診断

●問診

症状や≪アレルギー性鼻炎のサイン≫の確認、起こるきっかけや発症した時期などを確認します。

●鼻腔の観察

鼻鏡や鼻内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で鼻腔を観察し、下鼻甲介(鼻腔内にある血管に富んだ粘膜のヒダで鼻炎の時に炎症反応が強く起こりやすい場所)の腫れの程度を評価したり、透明のさらさらした水様性の鼻汁(小児の場合はしばしば粘性がある場合もある)があるかどうかなどを確認します。

●アレルギー検査

血液検査でアレルギー物質を特定し、その物質に対するアレルギーの強さを判断するアレルギー検査【特異的IgE抗体検査法:RAST】を行います。

注射による採血が難しい小児には、指先から少量の血液を採取して迅速(20分程度)に、〇ハウスダスト系〘ダニ・ネコ・イヌ〙
〇花粉系〘スギ・カモガヤ・シラカンバ・ブタクサ・ヨモギ〙
にアレルギーがないかを調べることができる、【イムノキャップラピッド】によるアレルギー検査を行います。

●鼻汁好酸球検査

アレルギー性鼻炎かどうかを簡易的に見分けるため、採取した鼻水に特殊な処理をして染色し、顕微鏡でアレルギー性鼻炎の際にみられる好酸球という血球成分が多くふくまれているか調べる鼻汁好酸球検査を行うことがあります。

小児アレルギー性鼻炎の治療

➀アレルゲンの除去・回避

症状を起こす原因になるアレルゲンの除去や回避が治療の
基本となります。通年性アレルギー性鼻炎の原因になるハウスダスト系であれば部屋の掃除を小まめに行って布製品をできるだけ部屋に置かないことが有効です〔鼻の病気:通年性アレルギー性鼻炎/治療の項を参照〕。

季節性アレルギー性鼻炎の原因になる花粉系であれば飛散シーズンに外出するときにはマスクやメガネでガードして、帰宅したらできるだけ花粉を部屋に持ち込まないことが重要です〔鼻の病気:季節性アレルギー性鼻炎/治療の項を参照〕。

②薬物療法 

症状が強くて日常生活に支障が起こる場合には、抗ヒスタミン薬・抗ロイ コトリエン受容体拮抗薬などの内服薬や鼻噴霧用ステロイド薬(2歳以上)を使う治療を行います。

③アレルギー免疫療法(舌下免疫療法) 

アレルギー免疫療法とは、アレルギーの原因である「アレルゲン」を少量から投与し、体をアレルゲンに慣らして抗体をつくることで、アレルギー症状を長期間和らげたり、唯一アレルギー症状を治す可能性がある治療法で約8割の患者様に有効です。

皮下免疫療法と舌下免疫療法ありますが、皮下免疫療法は注射のため頻回の通院が必要なこと、重篤な副作用を認めることがあることから、近年はダニとスギのみではありますが舌下免疫の普及が進んでいます。

小児の場合、5歳以上のアレルギー検査でダニ・スギに反応を認めていれば行うことができます。 詳しくは、〔舌下免疫療法(SLIT、アレルゲン免疫療法、減感作療法)〕を参照ください。

④手術療法 

小児では骨が発達途上であるため、大人のような手術は基本的に行いません。
ただ鼻づまりがひどいアレルギー性鼻炎の場合は、局所麻酔下の下鼻甲介粘膜焼灼術〘いわゆるレーザー治療〙(レーザーを用いて腫脹した下鼻甲介の粘膜を焼灼させて粘膜の腫れを抑える手術)の検討を行う必要があります。

※手術療法が必要と診断した場合は、手術可能な医療施設にご案内致します。

●【扁桃肥大〔口蓋扁桃(扁桃腺)肥大・アデノイド増殖症〕

扁桃とは、のどの粘膜にあるリンパ節の集合体のことを言います。ウイルスや細菌などがからだに侵入しないよう防御する役割を担っています。いわゆる扁桃腺として知られる口蓋垂(いわゆる喉ちんこ)の左右に一個ずつある口蓋扁桃のほか、鼻咽腔(鼻腔の最も奥にある空間で、咽頭との境目)に存在するアデノイド(咽頭扁桃)・舌の後ろ1/3の表面にある舌扁桃・耳管(耳と鼻とをつなぐ細い管状の通路)周囲にある耳管扁桃などがのどを取り囲んで免疫防御網の役割を果たしています。

これらの扁桃が通常よりも大きくなった状態を扁桃肥大といいます。免疫力が弱い小児の扁桃は肥大化することが珍しくないのですが、扁桃が肥大化しすぎると、呼吸障害やいびき・食べ物の飲み込みづらさなど様々な症状を引き起こします。

扁桃肥大の原因

人体

扁桃は生まれたときは痕跡程度ですが、ウイルスや細菌などの微生物・ホコリなど外からの刺激により活発な免疫反応が起きて肥大すると考えられています。

特に、口蓋扁桃・アデノイド(咽頭扁桃)は、母体からの免疫が薄れて免疫機能が脆弱になる1歳過ぎ頃から生理的に大きさを増すようになります。

口蓋扁桃:2~3歳から肥大が始まり、5~7歳で最大になり、12~13歳頃で縮小し思春期を過ぎる頃には萎縮します。

アデノイド(咽頭扁桃):口蓋扁桃よりも先駆けて、1~2歳で肥大が始まり、3~6歳で最大になり、10歳頃までには退縮します。

扁桃肥大の程度や経過は個人差が大きいのですが、急性な炎症(ウイルスや細菌の感染)を繰り返すこと・慢性的な炎症が起きること・遺伝的なことなどが要因となって肥大化し、大人になっても小さくならないことがあります。

口蓋扁桃が肥大した状態を口蓋扁桃(扁桃腺)肥大、アデノイド(咽頭扁桃)が肥大した状態をアデノイド増殖症と言います。

扁桃肥大の症状

口蓋扁桃肥大

軽度肥大であれば特に症状はありませんが、左右の扁桃腺が真ん中でくっついてしまうほど大きいと、上気道(鼻から声帯のある喉頭までの空気の通り道のこと)が狭くするため、いびき・睡眠時無呼吸症候群の原因となり、頻回の寝返り、寝汗、夜尿症、咳などによる中途覚醒、注意力の散漫、行動に落ち着きがない、胸郭の成長異常(漏斗胸)などを認めます。

また口に食べ物の量が減り、嚥下障害(固形物が飲み込みづらくなる)が起こるので、食が細くなったり、食事に時間がかかることがあります。他に口呼吸になるため、口臭や咳の原因にもなります。 小児の場合、口蓋扁桃肥大を認めているとアデノイドも同時に肥大していることが多いです。

アデノイド増殖症:

通常アデノイドの肥大は病的な意味を持たないのですが、肥大に伴って様々な症状が現れることがあります。鼻腔と咽頭との間が閉塞することにより、鼻づまり・いびきなどの症状が現れます。睡眠時無呼吸症候群の原因にもなりえるため、頻回の寝返り、寝汗、夜尿症、咳などによる中途覚醒、注意力の散漫、行動に落ち着きがない、胸郭の成長異常(漏斗胸)などを認めることがあります。

乳児では、哺乳がうまくできなくなることがあります。口呼吸になりすく、常時口が開いているために口の周りの筋肉が低下してしまりのない顔つきになります【アデノイド顔貌】。

耳管の開口部はアデノイドが存在する鼻咽腔にあり、アデノイド肥大によって耳管機能が障害されるために耳管狭窄症や滲出性中耳炎の原因になったり、アデノイドの炎症によって耳管経由で中耳に侵入する病原体が増殖しやすくなるために急性中耳炎を繰り返すことがあります。 鼻腔に常に分泌物(鼻汁や痰など)が貯留しやすくなるため慢性副鼻腔炎を併発しやすくなります。

扁桃肥大の検査・診断

●咽頭腔/鼻咽腔の観察

口から視診で口蓋扁桃を確認して大きさを評価します。 扁桃肥大は次のように分類されます。

扁桃肥大(特に第2度や第3度の場合)がある場合多くはアデノイド(咽頭扁桃)も肥大しているため、アデノイド(咽頭扁桃)の評価が必要ですが、アデノイド(咽頭扁桃)は口をあけても見えない部分にあるため、鼻咽腔内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で鼻咽腔の通りが悪くないかなどを確認します。

●画像検査(X線撮影/CT検査)

口蓋扁桃肥大/アデノイド肥大の程度や上気道を狭める状態にあるかなどを評価します。

●無呼吸簡易アプノモニター検査

いびきが大きい場合や無呼吸がある場合は行う必要があります。

扁桃肥大の治療

口蓋扁桃肥大

特に症状がない場合は経過観察です。大きいだけで手術することはありませんが、肥大による症状(いびき・睡眠時無呼吸症候群、嚥下障害など)を伴う場合は、 全身麻酔下の口蓋扁桃摘出術(肥大した口蓋扁桃を摘出する手術)を行う必要があります。

アデノイド増殖症

アデノイド肥大は5~6歳で大きさがピークになり、10歳頃までには退縮するため、症状がない場合は経過観察となります。 症状が(特にいびき・睡眠時無呼吸症候群)軽度であれば、抗ロイコトリエン受容体拮抗薬の内服や鼻噴霧用ステロイド薬の投与が有効です(特に抗ロイコトリエン受容体拮抗薬にはアデノイド縮小効果を有するとの報告があります)。

薬物療法行っても効果がない場合や肥大による症状(いびき・睡眠時無呼吸症候群・口呼吸・滲出性中耳炎など)が強い場合は、全身麻酔下のアデノイド切除術(増殖したアデノイドを切除する手術)を行います。

※口蓋扁桃摘出術やアデノイド切除術が必要と診断した場合は、手術可能な医療施設に ご案内致します。

小児睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)することで小児の身体や精神面の成長と発達に悪影響を及ぼす病気です。小児の約1~6%に睡眠時無呼吸症候群がみられるとされています。

睡眠時無呼吸症候群は、大人の病気としてよく知られていますが、実は小児でも発症してしまう病気です(見過ごされていることが多いようです)。健康維持に欠かせない良質な睡眠は、身体および精神面の成長と発達が最も盛んである小児期において何よりも重要なことです。

しかし睡眠時無呼吸症候群によって良質な睡眠がとれないと、成長ホルモンの分泌が悪くなり、低身長や体重増加不良など成長の遅れや精神面での発達の遅れにつながることが指摘されています。そのため小児睡眠時無呼吸症候群を見逃さないことが大切と言えます。

小児睡眠時無呼吸症候群の定義/重症度

◎定義

『無呼吸』とは10秒以上呼吸止まる状態、『低呼吸』とは換気が通常の50%以下になり、酸素飽和度が3%以上低下した状態になることを言います。

小児睡眠時無呼吸症候群とは、【2回分以上の呼吸停止がある】ことです。
大人の無呼吸の定義〔10秒以上の呼吸停止〕とは持続時間が異なります。

◎重症度

無呼吸・低呼吸が1時間に何回起こるか表したものを、AHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数といいます。大人の場合は、AHIが5回/時間以上認めると【睡眠時無呼吸症候群】と診断されますが、小児の場合は、AHIが1回/時間以上認めると【睡眠時無呼吸症候群】と診断されます。

軽度 :AHI=1~5回/時間  (大人の場合AHI=5~15回/時間)
中等度:AHI=5~10回/時間  (大人の場合AHI=15~30回/時間)
重度 :AHI=10回/時間以上 (大人の場合AHI=30回/時間以上)

小児睡眠時無呼吸症候群の原因

小児睡眠時無呼吸症候群

最多の原因は扁桃肥大(口蓋扁桃(扁桃腺)肥大・アデノイド増殖症)〔小児耳鼻咽喉科:扁桃肥大(口蓋扁桃(扁桃腺)肥大・アデノイド増殖症)の項を参照〕です。

口蓋扁桃は 5~7歳、アデノイド(咽頭扁桃)は3~6歳で最大の大きさとなり、上気道(鼻から声帯のある喉頭までの空気の通り道のこと)を狭くするため、いびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因になります。 また近年小児に増加中のアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などによる鼻づまりも影響します。

更には、肥満(のど周りや舌に脂肪がついて仰向けで寝ると咽頭部分がしめつけられて気道の通りが悪くなる)・小顎(口腔の容積が少ないため、舌の入るスペースがなく、仰向けで寝た際に舌が後退することで気道を塞いでしまう)・下顎後退(下顎が後方にあるため舌も後方になり、結果として気道の通りが悪くなる)・巨舌は上気道を狭くする要因になります。

小児睡眠時無呼吸症候群の症状

自覚症状を訴えることはあまりないので、保護者の観察が重要になります。

●寝ている時の状態

・口を開けて寝ている ・大きないびきを繰り返す ・呼吸が数秒止まる ・眠りが浅く、何度も起きる ・座ったまま寝るなど変な寝姿勢が見られる ・陥没呼吸(呼吸時にみぞおちがペコペコへこむ) ・咳などで夜中に起きる ・寝返りが激しい ・寝汗が多い ・夜尿を認める など

●起床時の様子

・寝起きが悪い ・起こさないと起きない ・朝からぼーっとしていたり、不機嫌だったりする ・口が乾いている ・口臭がする ・胸やけがする ・頭痛がする など

●日中の様子

・3時間以上の長時間にわたる昼寝をする ・幼稚園や学校で居眠りをする  ・集中力がなく落ち着きがない ・食欲がない、食が細い、食事に時間がかかる  ・車に乗るとすぐ寝てしまう ・勉強がふるわない など

●発育への影響

深い睡眠がとれないことで、代謝系や内分泌障害に影響して成長ホルモンの分泌が悪くなり、低身長や体重増加不良など身体発育の遅延につながります。

●顎顔面骨格や胸郭の成長への影響

睡眠時無呼吸の状態になると鼻呼吸がしづらいために口呼吸になりすく、常時口が開いているために口の周りの筋肉が低下してしまりのない顔つき【アデノイド顔貌】になります。

さらに上下顎発育の成長も阻害されるため、顎顔面骨格の成長に悪影響を与えます。 また鼻呼吸がしづらいために息を吸うときにより一層大きな力が胸にかかることで肋軟骨の成長が肋骨などより早く成長してしまうために【漏斗胸】を生じるようになります。

●精神発達への影響

睡眠時無呼吸の影響で十分な酸素が脳に供給されないことなどが起因することで、記憶に関係する海馬や覚醒に関する神経にダメージを与えたり、睡眠中の脳脊髄液中の老廃物除去能を妨害することが予想されています。

その結果、注意欠陥多動性障害・集中力の低下・感情/行動の不安定性・人格の変化(攻撃的もしくは内向的になるなど)・記憶力低下・学習能力低下・うつ病などに関係することがあるとされています。

●心血管系への影響

大人と同様、特に重症の睡眠時無呼吸症候群になると、心血管機能障害が起きることが報告されています。

小児睡眠時無呼吸症候群の検査・診断

●問診

寝ている時の状態・起床時の様子・日中の様子などを確認します。

●身体的診察

低身長・低体重・肥満などがないかを確認します。またアデノイド顔貌や漏斗胸の有無確認を行います。

●咽頭腔/鼻咽腔の観察

口からの視診や鼻咽腔内視鏡検査(電子ファイバースコープ)で口蓋扁桃肥大やアデノイド肥大の状態を確認します〔小児耳鼻咽喉科:扁桃肥大の検査・診断の項を参照〕。 また鼻づまりの原因となるアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎がないかを確認します。

●画像検査(X線撮影/CT検査)

口蓋扁桃肥大/アデノイド肥大の程度や上気道を狭める状態にあるかなどを評価します。
アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎などの程度や状態を評価することもあります。

●自宅でのビデオモニタリング

睡眠中の画像記録や音声録音が有用です。口呼吸・無呼吸・胸の陥没呼吸の観察が大事なので、口元・胸・おなかが同時に見えるようにスマホなどで録画して頂きます。

特にレム睡眠時(浅い眠りで身体はよく眠っているのに脳が活発に動いている状態)に病態が悪化することが多いので、入眠1時間後や早朝覚醒前の撮影が最適です。

●睡眠検査
睡眠検査
①簡易アプノモニター検査

簡易アプノモニターによるスクリーニング検査(睡眠時無呼吸症候群の有無を判定)で、小型の検査機器を業者からレンタルし、自宅で夜間睡眠中の無呼吸低呼吸の回数・いびき・血中酸素濃度などを記録します。

小児(特に乳幼児)の場合は装置が外れやすく、簡易検査では検出しにくい呼吸(陥没呼吸など)が多いなどの理由から、検査の正確性に欠けることが指摘されています。ただ自宅で安心した気持ちで簡単にできる検査なので、睡眠時無呼吸症候群の目安をつけるため、またPSG検査の補助的な検査(PSG検査がうまくできない場合もあるため)として簡易アプノモニター検査を行います。

②終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)

簡易アプノモニター検査でAHI1回/時間以上の小児や、ビデオモニタリングなどで睡眠時無呼吸症候群があると予測される小児には、検査可能な医療施設に1泊2日入院して精密検査(PSG検査)を受けて頂きます。

PSG検査は、簡易検査で取得できる情報(無呼吸低呼吸の回数・いびき・血中酸素濃度)のほかに体位や体動記録・脳波・心電図・眼球運動及び筋電図なども観測することで、睡眠の深さ、睡眠の質、呼吸の状態、血液中の酸素の状態などが総合的にわかる検査です。睡眠時無呼吸症候群以外に周期性四肢運動障害などの睡眠障害の詳細な診断も可能になります。

《PSG検査結果の評価》

AHI:1~5回/時間➡保存療法(主に薬物療法・必要に応じてCPAP療法など)で経過観察可能で可能ですが、必要時には3歳以上で手術療法(口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術)を検討します。
AHI:5~10回/時間以上➡保存療法を先行させますが、3歳以上であれば手術療法も検討します。
AHI;10回以上/時間➡2歳以下であれば保存療法(特にCPAP療法)を先行させますが、3歳以上であれば保存療法と共に手術療法を行います。

費用

PSG検査自体は、保険診療にて3割負担の方は1万円前後(1割負担の方は3,000円前後)で検査できますが、入院費用や個室代金がかかるため合計3~5万円の費用がかかります。
※PSG検査が必要と診断した場合は、検査可能な医療施設をご案内致します。

小児睡眠時無呼吸症候群の治療

◎保存的療法
●薬物療法 

アデノイド増殖症や鼻づまりの原因になるアレルギー性鼻炎/副鼻腔炎があれば抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(小児慢性副鼻腔炎があればマクロライド少量長期投与)の内服や鼻噴霧用ステロイド薬の投与を行います。(特に抗ロイコトリエン受容体拮抗薬にはアデノイド縮小効果を有するとの報告があります)。

軽症の小児睡眠時無呼吸症候群であれば薬物療法を行っている間に成長過程で相対的にのどが広がり改善してしまうことも少なくありません。

CPAP療法
●CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)

睡眠時無呼吸症候群:治療の項を参照〕 眠るときに鼻マスクを装着する簡単な治療法です。一定の圧力の空気を鼻マスクに送り、 マスクを介して常に空気を送ることで上気道を広げ、無呼吸を防ぎます。

適応:2歳以下で薬物療法を行っても改善がみられない場合や、重度の肥満で手術療法が行えない場合などに行います。

●減量

肥満気味であれば、運動や食生活の改善で痩せることが大事になります。
逆に痩せることで睡眠時無呼吸症候群が治ることも期待出来ます。

◎手術的療法

小児睡眠時無呼吸症候群の主原因となる口蓋扁桃肥大・アデノイド増殖症に対して、全身麻酔下の口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術を行うことで、睡眠時無呼吸症候群を改善させることができます。

適応:3歳以上で保存療法では改善が見られない場合や重度の睡眠時無呼吸症候群である場合などに行います。

※口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術が必要と診断した場合は、手術可能な医療施設にご案内致します。

溶連菌感染症

A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)という細菌の感染で起こる病気の総称です。多くは咽頭炎や扁桃炎ですが、中耳炎・副鼻腔炎・肺炎・とびひ(皮膚への感染)・関節炎・骨髄炎・髄膜炎などを引き起こすことがあります。 2~10歳頃の小児に多い感染症ですが、大人でも感染することがあります。

溶連菌感染症の原因

原因となる病原体はA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)です。様々なタイプがあり、何度か感染する可能性があります。

主な感染経路は飛沫感染(感染者のくしゃみ・咳などの時に出る飛沫物(ツバ)を吸い込むことによって感染するなど)ですが、接触感染(溶連菌が付着した手で口や鼻を触れることで感染するなど)によっても起こります。保育園や幼稚園、学校で大流行することがあります。

溶連菌は毒素が高く

①ヒトの組織を直接破壊する
②免疫に不具合を生じさせる    
③毒素を産生する など

の方法で急性期に多彩な症状を呈します。また、急性糸球体腎炎やリウマチ熱。アレルギー性紫斑病といった病気の原因にもつながることがあるので注意が必要です。

溶連菌感染症の症状

2~5日間の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)を経て、発熱や咽頭痛が起こり、翌日以降に口蓋扁桃の腫れ(白苔の付着)、全身倦怠感、首のリンパ節の腫れ/圧痛、いちご舌(舌が赤くなり、いちごのようにぶつぶつが出てきます。)、赤く細かい発疹(高熱が出て2日くらいたつと、首や胸腹部・腕・太ももなどに小さな痒みのある赤い発疹が出ます。しょう紅熱とも言われます。)などが現れます。

発症初期には頭痛や腹痛・嘔吐を伴うこともありますが、風邪症状のように、咳や鼻汁・鼻閉などの症状を伴うことはほぼないのが特徴です。多くの場合、のどの粘膜は非常に強く赤くなり、出血斑(点状の出血)をしばしば認めることもあります。

発疹が現れてから1週間ほどたつと、皮膚落屑(発疹のあったところの皮膚がボロボロと剥げ落ちる症状)がみられることがあります。

※溶連菌に感染しても全ての症状が現れるわけではありません。

合併症

溶連菌感染症にかかった人の1~2%の頻度ではありますが、回復後2~4週間後に急性腎炎(急性糸球体腎炎)やリウマチ熱・アレルギー性血管性紫斑病などを発症することがあります。顔のむくみ・血尿・動悸・息切れ・関節痛などには注意してください。

溶連菌感染症の検査・診断

●溶連菌迅速検査

A群溶連菌迅速検査キットを使用します。
溶連菌の診断のため、また抗生剤を内服した約10日後に溶連菌の消失を確認するために行います。

●尿検査

合併症(特に急性糸球体腎炎)が起きていないかを確認するため、溶連菌感染症と診断してから約1か月後に行います。

溶連菌感染症の治療

◎保存的療法

ペニシリン系の抗生物質(サワシリン®・パセトシン®など)を10日間内服して頂きます。ペニシリン系の抗生物質にアレルギーがある小児は、セフェム系の抗生物質(フロモックス®・メイアクト®など)/ニューキノロン系の抗生物質(オゼックス®)いずれかを7日間内服します。

【注意】
抗生物質内服24時間以内に感染力は消失・服用2~3日で症状は治まりますが、症状が治 まったからといって途中で抗生物質内服をやめてしまうと、溶連菌がまた増殖して症状をぶり返したり、再発すると合併症を引き起こす可能性が高くなるため、処方された薬は全て飲み切ることがとても大切です。
自宅で出来る予防として

感染力が強く、特に家庭内感染が多いため、家族が溶連菌感染と診断されたら

登園・登校について
溶連菌感染症は、学校保健法によって管理を受ける「条件によっては出席停止の措置が必要な病気」の一つです。適切な抗菌薬による治療開始後24時間以降に全身の状態が良ければ登園・登校可とされていますので、少なくとも受診した日とその翌日は出席停止が求められています。

流行性耳下腺炎(おたふく風邪)

ムンプスウイルスによる感染症で耳下腺が腫れる病気です。一般的には〖おたふく風邪〗として知られています。 3~6歳の小児に多い感染症ですが、大人でも感染することがあります。

流行性耳下腺炎の原因

原因となる病原体はムンプスウイルスです。
飛沫感染(ムンプスウイルスは感染者の唾液に多く含まれており、感染者のくしゃみ・咳などの時に出る飛沫物(ツバ)を吸い込むことによって感染するなど)や接触感染(ムンプスウイルスが付着した手で口や鼻を触れることで感染するなど)によって感染が拡大します。ムンプスウイルスは他のウイルスよりも感染力が高いことが知られており、保育園や幼稚園、学校で大流行することがあります。

流行性耳下腺炎の症状

流行性耳下腺炎

2~3週間の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)を経て、唾液腺(唾液を出す耳下腺・顎下腺・舌下腺)の腫れ・圧痛・嚥下痛(ものを飲み込むときの痛み)・発熱を主症状として認めます。唾液腺の腫れは両側あるいは片側の耳下腺にみられることがほとんどですが、顎下腺や舌下腺にも起こることがあります。通常2日以内にピークを認め、1~2週間で軽快します。

しかし合併症として髄膜炎・脳炎・難聴(内耳細胞にムンプスウイルスが感染)などを起こすこともあり、特に難聴は片側の高度難聴で永続的な障害となります。思春期以降の男女が感染すると、男性では睾丸炎/女性では卵巣炎を起こすこともあり、まれに不妊の原因となることがあります。

流行性耳下腺炎の検査・診断

●血液検査

細菌かウイルス、どちらの原因による耳下腺かを調べるため、また炎症の程度を評価《白血球数(WBC)とその分画・C反応性たんぱく(CRP)などを測定》するために行います。またムンプスウイルスのIgM/IgGという2種類の抗体価を調べることで、ムンプスウイルスに現在感染しているのか、既に感染したことがあるのかを確認することできます。

流行性耳下腺炎の治療

◎保存的療法

ムンプスウイルスに対する特効薬はないため、痛みや発熱の症状に対する対症療法(解熱鎮痛剤の内服など)が中心になります。

自宅で出来る予防として

ムンプスウイルスに対する予防方法

おたふくかぜワクチン(任意接種・生ワクチン)で予防します。流行性耳下腺炎はかかっても軽症の場合が多いのですが重い合併症を引き起こすことがあるのでワクチン接種が重要です。

1回目:1歳(1回接種のみでは予防効果は十分ではありません。)
2回目:1回目の接種から2~6年後(小学校入学前の接種が推奨されています。)

登園・登校について
溶連菌感染症は、学校保健法によって管理を受ける「出席停止の措置が必要な病気」の一つです。耳下腺・顎下腺または舌下腺の腫れが発現した後5日を経過し、かつ全身の状態が良ければ登園・登校可とされています。

咽頭結膜熱(プール熱)

アデノウイルスによる感染症で咽頭炎や結膜炎を起こす病気です。
プールでの接触やタオルの共用により感染することがあるため、プール熱と呼ばれています。咽頭結膜熱にかかる患者の6割は5歳以下とされていますが、大人(特に咽頭結膜炎にかかった児を看病している方など)でもまれにかかることがあります。

咽頭結膜熱の原因

原因となる病原体はアデノウイルスです。咽頭結膜熱には1年中かかる可能性がありますが、アデノウイルスは暑くて湿度の高い環境を好むため、夏場に流行しやすくなる特徴があります。特に6月頃から増え始め、10月頃まで流行します。

水の消毒が不十分なプールになんらかの理由でアデノウイルスが含まれると、プールの水を介して感染することもあることからプール熱と言われていますが、実際には飛沫感染(感染者のくしゃみ・咳などの時に出る飛沫物(ツバ)や鼻汁のしぶきなどを吸い込むことによって感染するなど)が多くみられます。また、目ヤニから接触感染(眼から出たアデノウイルスを含んだ分泌物を手で触ってしまうことで感染が広がるなど)によって感染します。

アデノウイルスは感染力が非常に強く、咽頭結膜熱の症状がなくなったあとも、のどからは1~2週間程度、便からは2~4週間程度もウイルスが排出されることがあるので注意が必要です。

咽頭結膜熱の症状

咽頭結膜熱の症状

5~7日間の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)を経て、まず急な高熱(39~40℃)がでます。その後、咽頭痛・頭痛などを認め、これらの症状が3~5日間続きます。咽頭の腫れ/発赤、急性扁桃炎、首のリンパ節の腫れ/圧痛を認めることもあります。

目の症状としては、結膜の充血・目の痛み/かゆみ・まぶしく感じる・涙が止まらないなどがあり、一般的にまず片方の目に現れ、その後反対側の目にも同様の症状が現れます。

アデノウイルスにも色々なタイプがあり、感染するタイプによって呈する症状が異なることがあります。中には胃腸炎症状(吐き気・嘔吐・食欲低下・下痢など)を認めたり、耳や鼻に侵入して中耳炎や副鼻腔炎を起こしたり、まれに肺炎などを起こして重症化することもあります。

咽頭結膜熱の検査・診断

●アデノウイルス迅速検査

アデノウイルス迅速測定キットを使用します。

●血液検査

アデノウイルスの抗原検査をしたり、急性期と回復期のペア血清からの抗体上昇で決定する検査をすることがあります。

咽頭結膜熱の治療

◎保存的療法

アデノウイルスに対する特効薬はないため、症状緩和をさせる対処療法(痛みや発熱に対して解熱鎮痛薬の内服など)が中心となります。咽頭炎に対して粘膜改善薬/去痰薬・抗炎症薬・空咳症状があれば咳止め薬などの内服薬やトローチ・うがい液などの外用薬、結膜炎に対してステロイド・抗ヒスタミン薬・抗生剤などの点眼液を処方します。

高熱が出る上にのどの痛みは腫れで食事がしづらい場合もあるため、脱水症状にならないよう、しっかりと水分補給を行いましょう。また刺激物は避け、喉越しの良い飲み物や食べ物(プリン・ゼリー・ヨーグルト・ポタージュスープなど)を選ばれることをおすすめします。

自宅で出来る予防として

アデノウイルスは感染力が非常に強いウイルスです。

登園・登校について
咽頭結膜熱は、学校保健法によって管理を受ける「出席停止の措置が必要な病気」の一つです。すべての症状(熱やのどの症状、目の症状)が落ち着いた後2日を経過すれば登園・登校可とされています。

ヘルパンギーナ

コクサッキーウイルスによる感染症で発熱と口の粘膜に痛みを伴った水泡性(水ぶくれ)の発疹を特徴とした病気です。 4歳以下(特に1歳代が最多)の小児に多くみられる感染症です。大人でも感染することがありますが、大人に感染すると小児よりも症状が重く、長引く傾向にあります。

ヘルパンギーナの原因

原因となる病原体はエンテロウイルス属のA群コクサッキーウイルスです。夏場に流行しやすいのですが、5月頃から増え始め、6~7月にピークとなります。

感染力が非常に強く、飛沫感染(感染者のくしゃみ・咳などの時に出る飛沫物(ツバ)や鼻汁のしぶきなどを吸い込むことによって感染するなど)と接触感染(舐めて唾液や鼻水がついたおもちゃの貸し借りなど、手が触れることで感染するなど)を含む糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが接触などによって小児の手指に付着し、手指をおしゃぶりするなどして口に入ることで感染するなど)で感染します。

特に、幼稚園や保育園では乳幼児間での接触が多く、集団発生することが多いのが特徴です。急性期(症状がある間)にもっともウイルスが排泄され感染力が強いのですが、症状消失後ものどから1~2週間、便から2~4週間にわたってウイルスが検出されることがあります。

ヘルパンギーナの症状

2~4日間の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)を経て、突然の高熱(39~40℃)に続いて咽頭痛が出現し、咽頭粘膜の赤みが目立つようになり、のどの奥の上側(軟口蓋・口蓋弓)や上あごの粘膜の部位に直径1~2mmほど(大きいものだと5mm程度)の紅暈(こううん:部分的に充血して赤く見えること)で囲まれた小水疱(水ぶくれ)が出現します。小水疱は破れて浅い潰瘍を形成すると、痛みが出現します。

発熱については2~4日程度で解熱し、それにやや遅れて口の中の粘膜疹も消失していきます。発熱時に熱性けいれんを伴うことや、口腔内の痛みのため不機嫌や哺乳障害・経口摂取を嫌がるなどから脱水などに至ることもありますが、ほとんどは予後良好です。まれに無菌性髄膜炎(発熱・頭痛・嘔吐などの症状)・脳炎(意識障害・ふらつきなど)や急性心筋炎(呼吸困難・顔色が悪い・むくみ・胸痛・動悸など)を合併することがあります。

ヘルパンギーナの検査・診断

●咽頭の観察

その場で行う迅速検査はなく、症状の経過や咽頭の所見(小水疱の状態や出来ている部位など)から診断を行います。

ヘルパンギーナの治療

◎保存的療法

コクサッキーウイルス/エンテロウイルスに対する特効薬はないため、症状緩和をさせる対処療法(発熱や口の中の水疱の痛みに対して解熱鎮痛薬の内服など)が中心となります。脱水に対する治療が必要なこともあります。しっかりと水分補給を行いましょう。

また刺激物は避け、喉越しの良い飲み物や食べ物(プリン・ゼリー・ヨーグルト・ポタージュスープなど)を選ばれることをおすすめします。 まれではありますが、無菌性髄膜炎・脳炎・急性心筋炎を合併した場合は入院加療が必要 です。

自宅で出来る予防として

コクサッキーウイルスは急性期(症状がある間)にもっともウイルスが排泄され感染力が強まります。

登園・登校について
手足口病は、学校保健法によって管理を受ける「出席停止の措置が必要な病気」には含まれていません。症状が回復してからもウイルスは長期にわたって排泄されることがあり、急性期(症状がある間)だけ登園・登校停止を行っても流行阻止の効果はあまり期待できないからです。
登園・登校の目安は発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれることです。発熱やのどの痛み・下痢が見られる場合や口の中の水疱・潰瘍の影響で食べ物が食べられない場合には登園・登校を控えてもらい、本人の全身状態が安定したら登園・登校が可能となります。

手足口病

コクサッキーウイルスおよびエンテロウイルスなどのウイルスによる感染症で口の周りや口の中の粘膜・手のひらや甲・足の裏や甲などに現れる水疱性(水ぶくれ)の発疹を特徴とした病気です。

5歳以下(2歳以下が大半)の小児に多くみられる感染症です。大人でも感染することがありますが、原因となるウイルスが複数存在するため、一度かかったら二度とかからないということはありません。繰り返し発症することもあります。

手足口病の原因

原因となる病原体はエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA16・エンテロウイルス71が主に知られていますが、コクサッキーウイルスA9やコクサッキーウイルスA10・コクサッキーウイルスA6(以前はヘルパンギーナの原因ウイルスと認識されていたウイルス)なども原因ウイルスとなります。夏場に流行しやすいのですが、5月頃から増え始め、6~7月にピークとなります。

手足口病を引き起こすウイルスは複数の型があり、一度感染して免疫ができても、別の型のウイルスに感染すると、再び発症するなど繰り返し発症することがあります。

感染力が非常に強く、飛沫感染(感染者のくしゃみ・咳などの時に出る飛沫物(ツバ)や鼻汁のしぶきなどを吸い込むことによって感染するなど)と接触感染(舐めて唾液や鼻水がついたおもちゃの貸し借りなど、手が触れることで感染するなど)を含む糞口感染(便の中に排泄されたウイルスが接触などによって小児の手指に付着し、手指をおしゃぶりするなどして口に入ることで感染するなど)で感染します。

特に、幼稚園や保育園では乳幼児間での接触が多く、集団発生することが多いのが特徴です。急性期(症状がある間)にもっともウイルスが排泄され感染力が強いのですが、症状消失後ものどから1~2週間、便から2~4週間にわたってウイルスが検出されることがあります。

手足口病の症状

手足口病の症状

3~5日間の潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)を経て、主に口の周りや口の中の粘膜・手のひらや甲・足のうらや足の甲などの四肢末端に2~3mmの水疱性(水ぶくれ)発疹が出現していきます。口の中にできた発疹は破れて潰瘍ができると痛みがでたりかゆみがでやすい一方、手足の発疹は症状が無い場合が多くなります。

発熱は約1/3に認められますが、微熱程度で高熱になることはあまりありません。またのどの痛みや下痢の症状などを伴うことがあります。まれに無菌性髄膜炎(発熱・頭痛・嘔吐などの症状)・脳炎(意識障害・ふらつきなど)や急性心筋炎(呼吸困難・顔色が悪い・むくみ・胸痛・動悸など)を合併することがあります。

手足口病の検査・診断

●咽頭の観察

その場で行う迅速検査はなく、症状の経過や小水疱の所見(小水疱の状態や出来ている部位など)から診断を行います。

手足口病の治療

◎保存的療法

コクサッキーウイルス/エンテロウイルスに対する特効薬はないため、症状緩和をさせる対処療法(発熱や口の中の水疱の痛みに対して解熱鎮痛薬の内服など)が中心となります。脱水に対する治療が必要なこともあります。しっかりと水分補給を行いましょう。

また刺激物は避け、喉越しの良い飲み物や食べ物(プリン・ゼリー・ヨーグルト・ポタージュスープなど)を選ばれることをおすすめします。 まれではありますが、無菌性髄膜炎・脳炎・急性心筋炎を合併した場合は入院加療が必要 です。

自宅で出来る予防として

コクサッキーウイルスは急性期(症状がある間)にもっともウイルスが排泄され感染力が強まります。

登園・登校について
手足口病は、学校保健法によって管理を受ける「出席停止の措置が必要な病気」には含まれていません。症状が回復してからもウイルスは長期にわたって排泄されることがあり、急性期(症状がある間)だけ登園・登校停止を行っても流行阻止の効果はあまり期待できないからです。
登園・登校の目安は発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれることです。発熱やのどの痛み・下痢が見られる場合や口の中の水疱・潰瘍の影響で食べ物が食べられない場合には登園・登校を控えてもらい、本人の全身状態が安定したら登園・登校が可能となります。